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特集

雨宮処凛の“かりん”と直言

ワーキングプアの逆襲

 最近、私の周りでは、怒濤の反撃が始まっている。「生存権」を賭けた「現代の百姓一揆」「現代の米騒動」的な若者たちの反撃だ。

 例えば8月23日、グッドウィルで働く若者たちで結成された「グッドウィルユニオン」が、集団訴訟を開始! 若者たちが燃えて立ち上がった理由は、規制緩和によって生まれた究極の不安定雇用である日雇い派遣の劣悪な労働環境によるものである。グッドウィルで1日働いても貰えるのは6000?7000円。現場では派遣だからと差別的な扱いを受け、安全教育もないままに危険な仕事をさせられる。ゆえに事故が多いものの、事故が起きても何の保障もないことも多々ある。現場に入ればスタンガンで脅されながら働かされたり、土下座して謝っているのに安全靴で頭を踏まれたり、「現代か? 」「日本か? 」という話は後を絶たない。そうやって働いて得た賃金から、今度は「データ装備費」という名目で一稼動ごとに200円が引かれてしまう。たかが200円でも、何年も働けば総額は数十万円にものぼる。ワーキングプアから毎日200円を天引きして、グッドウィルは「データ装備費」だけで年間15億も儲けていた。

 そんなことに黙っていられないと、今年三月、グッドウィルユニオンが結成された。今回の第一次訴訟の原告は26人。提訴当日、原告らは「とられたものをとり返すのは当り前」と訴えた。彼らは「今、もっと苦しい人たちのために何か自分でできることがあれば」と集団訴訟に参加したという。

 集団訴訟に先駆け、7月22日に六本木ヒルズ前で行われた「折口ちょっと来い!  ピンハネと不安定雇用に抗議する緊急行動」には、選挙活動中の社民党党首・福島みずほさんや候補者の上原さん、杉浦さんも駆け付けてくれた。

 それにしても、このデータ装備費問題を考えるたびに、なんとも言えない「恥ずかしさ」「情けなさ」が襲ってくる。はからずも原告の一人が記者会見の席で言った。

 「折口さんて、お金持ちなのに200円とるなんて、こんなセコい人って見たことがない」

 そう、セコいのだ。金持ちなのにやってることがどうにもならないほど貧乏臭いのだ。

 提訴当日、私たちは厚生労働省の前で叫んだ。

 「ピンハネをやめろ! 」「ワーキングプアをなくそう!」「俺たちをモノ扱いするな! 」

 俺たちは、モノではなく人間だ。どうしてこんなことを声高に言わなければいけないんだろう? だけど、私たちを生きづらくさせるものに対しては、やっぱりいちいち声を上げなければならない。私たちは人間だ、と。そんなことを言わなければならないこと自体が、絶望的なんだけど。

(2007年9月5日 社会新報 「文化人コラム」より)

プロフィール

雨宮処凛(あまみや・かりん)

雨宮処凛1975年、北海道生まれ。ゴスロリ作家。元パンク歌手&元政治活動家。アトピーが原因で受けたイジメを発端に、不登校、家出、リストカット、自殺未遂などを繰り返す。その壮絶な半生を描いた『生き地獄天国(太田出版)は大きな反響を呼ぶ。最近は、若者の雇用問題などにも積極的に取り組んでいる。
【雨宮処凛公式ホームページ】http://www3.tokai.or.jp/amamiya/


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