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ドル安と米国離れ-ブッシュ政権の歴史的大失策-

 サブプライム問題に端を発した米国の金融不安はドル安という事態となった。ドル安は対米不信であり、ブッシュ政権に対する不信任の表明でもある。

 ブッシュ政権はネオコンの口車に乗って取り返しのつかない大失策を行なった。イラク戦争である。テロ犯罪者に対して犬猿関係の国(イラク)を相手に戦争を仕掛けた。テロとは直接関係のない国を相手に戦争とは世界があきれる暴挙だ。

 まさに国際法を無視した超大国の横暴であり、これを見てフランス、ドイツなどはイラク戦争の行く末と、米国の将来を見通し、ブッシュ政権との距離を取り始め、各国も派兵を次々と引き揚げた。

 ロシア、中国などは米国の苦悩ぶりを冷たく静観し、これをチャンスと巧妙に立ち回った。おかげで米国はイスラム圏だけでなく、世界の嫌われ者となる。

 経済の世界は反応に時間がかかるが、動きは厳粛だ。政治や外交の力で抑えても、効果は一時的でしかなく、流れは着実に進む。ベトナム戦争末期、南ベトナムの預金金利は年率400%に跳ね上がったが、それでも預金はひき下ろされ、海外に送金された。紙切れになる運命になったからだ。

 今回のドルはそれほどではないが、もともと、米国は双子の赤字に苦しむ債務超大国。常に世界から資金を集めなくては国家財政が成り立たない。ましてイラク戦争の費用も海外から調達する必要がある。そこで世界の金利を低く抑え、日本などに金融緩和策を続けさせ、対米投資を促してきた。

 ところが、サブプライム問題で米国の金融界に「火」が付いた。これを見て、世界の資金は対米投資を考え直し始めた。ドルへの投資は危ないと。

 こうなると先に逃げるが勝ちだ。遅れれば、それだけドル安で被害は大きくなる。かくしてドル急落となった。今後、ドル防衛の救急策が繰り返されるだろう。

 まさに「歴史は繰り返す」。ベトナム戦争の泥沼化と、ドルの変動制への移行(ニクソン・ショック)が思い出される。

 ベトナム戦争の敗北がその後の米国を長く苦しめたように、これから米国は長い苦難の時代に入るだろう。ブッシュ大統領は歴史に学ばず、米国を超大国から世界の嫌われ者に凋落(ちょうらく)させ、ドルを急落させ、史上最悪の大統領に転落した。

(社会新報2007年12月5日号より)


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