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不気味なインフレ -忍び寄る景気失速-

 米国のサブプライム問題(信用度の低い住宅ローンの暴落)で世界の金融市場が信用収縮の恐怖に震え、株価が急落したが、米国連銀の金利を引き下げなどで、とりあえず事なきを得た。その後株価は反発に転じて、世界は胸をなでおろしているが、これで世界経済が健全性を取り戻した訳ではない。

 米国ではサブプライム問題に端を発した住宅価格の急落で、サブプライムローンの利用者だけでなく、通常の住宅ローン利用者も返済負担増に直面してきた。米国の住宅ローンは、ローンを担保にした住宅価格が値下がりすると、契約上、利払いや返済額を増やす必要があるからだ。

 この負担に耐えられず、自宅売却に追い込まれる人も増えている。この自宅売却がさらなる住宅価格の値下がりを誘発し、住宅価格はスパイラル下落に陥る懸念も強い。このローン負担増から米国の乗用車の売れ行きを心配する向きも増えてきた。自動車ローンの縮減が予想されるからだ。

 これを恐れているのが、トヨタ自動車をはじめとする日本の自動車メーカーだ。なにしろ自動車産業は国内の販売不振を好調な輸出で補い、海外依存の日本経済を代表している産業でもある。

 この輸出鈍化を恐れているのはスーパー、百貨店などの小売業界も同様だ。現状ですら前年比でマイナスと売れ行き不振に苦しんでおり、ここで輸出鈍化の追い討ちが加われば、個人消費はさらに低迷し、景気拡大が失速しかねない。

 ともかく現状の景気は輸出にけん引された大企業の好業績に依存しており、国内需要は曇り空だ。なによりも給与所得者の収入が伸びていない。それで個人消費もぱっとせず、景気拡大感が庶民の暮らしの実感に届かない。そんな景況感に忍び寄ってきたのが景気失速の懸念である。

 原油高騰に続いて穀物が高騰している。ガソリン、灯油の値上げに加えて穀物の高騰は、小麦粉の値上げも始まり、パン、めん、お菓子などの値上げにつながる。さらに今後は飼料の値上げにより、牛肉、豚肉、鶏肉などの食肉や牛乳の値上がりも予想される。

 食費の値上がりは、何よりも庶民の生活を直撃する。食べ物は命の源泉で、節約にも限度がある。秋を迎えて日本列島は景気失速の懸念を深めている。

(社会新報2007年10月17日号より)


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