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食料自給政策の重要度増す -コメ、小麦に異変の秋-

 政局に国民の目が奪われている間に、秋の収穫期を迎えた新米が急落している。この分では、稲作農家は年末の農薬などの支払いができず、倒産する農家も出てくる懸念が強い。単にコメが安いと喜んでいる場合ではない。

 そんな衝撃が走ったのは、全国農業協同組合連合会(JA全農)が新米の集荷に際して、農家に支払う前払い金を一挙に7000円(60キロ当たり)と設定したことだ。

 前年のそれは東北、北陸などの稲作地域で、1万3000円だったから大幅の値下げである。全農がこれほどの値下げに踏み切ったのは、今年から政府の減反政策が打ち切られた影響で、コメの作付面積が増え、過剰感が強まり、需給関係から新米価格が急落すると予想されたからだ。

 事実、首都圏などで始まったスーパーなどでの新米価格は前年同期比で10キロ当たり1000円程度値下がりしている。全農などの集荷価格の引き下げをそのまま反映した格好だ。

 この値崩れに全国の稲作農家はショックを受けている。ただでさえ稲作経営は苦しく耕作放棄の水田は山間部だけでなく、平野部にまで広がっている。

 今回の値下げで、来年以降さらに耕作放棄の水田が広がる気配だ。そればかりか、この急落したコメの価格では農薬、肥料代、水田整備費などが返済(決済時期は年末に集中)できず、倒産する大規模農家も出てきそうだ。

 倒産とならなくても、やむなく預貯金を引き出す農家が全国にまん延しそうだ。それは来年以降のコメ自給力の低下につながることになる。

 折から世界の穀物相場はオーストラリアの干ばつ被害や、中国、インドなど巨大人口国の小麦など穀物輸入の拡大で暴騰している。地球温暖化とアジアの経済成長がもたらした穀物需給の逼迫(ひっぱく)である。

 この影響で農水省は小麦の政府売り渡し価格を引き上げ、これを受けて全国の製粉会社は小麦粉の値上げを発表、パンや麺類の値上がりが目前に迫ってきた。国産のコメは急落、輸入依存の小麦は急騰という異変。

 消費者は新米が安くなったと喜んでいる場合ではない。コメが自給できなくなれば、パンや麺でよいという訳にはいかなくなった。農水省の大臣は失脚を繰り返している場合ではない。

(社会新報2007年10月3日号より)


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