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2000万円問題 速やかに年金財政検証を公表せよ

 金融庁が3日公表した報告書で、無職の高齢者夫婦が暮らすには年金だけでは足らず30年間で約2000万円が不足するとした問題で、麻生金融担当相は11日、報告書として受理しない考えを示した。麻生氏は報告書発表直後には「今のうちから考えておかないといかん」と内容を事実上肯定、その後は安倍首相と歩調を合わせて「不適切な表現」としていたのだが、ついに得意の「なかったこと」の世界に踏み込んだわけだ。

 報告書の意図が、高齢者の資産をリスクマネーとして金融市場に引き出すことにあることは見やすい。しかし多くの高齢者の生活実態は元本割れのリスクを引き受けられるものなのか。

 「預貯金ゼロ世帯」が31・2%との17年の金融広報中央委員会(日銀内に事務局を置く)の調査結果は衝撃を与え、関係機関はその後、「貯蓄ゼロ」とは運用目的の金融資産ゼロという意味(つまりタンス預金は含まれない)とか、18年の数値は改善したなどと火消しに躍起となった(賃金統計と同様の疑念も抱かれているが)。だが、実態はごまかせない。単身者の貯金ゼロ世帯は48・1%、貯蓄額の(小さい数字から順に並べてちょうどまん中に位置する)中央値は20万円だという(16年)。仮にゼロ世帯が5割を超えたら、中央値は0円になってしまうという話だ。そして国民年金の平均受給月額は5・5万円。世にあふれる資産運用のCMは、こうした人々にとっては別世界の話だろう。

 04年年金改革で「100年安心」と言われたことの意味は、所得代替率50%以上を維持するということ。しかし、その前提となる経済見通しは甘いと以前から指摘されてきた。また、支給水準維持のために公的年金の積立金を長期にわたって取り崩す方針なのだが、企業年金の厚生年金基金(いわゆる3階部分)がほぼ全滅(解散)したという経緯などから、公的年金積み立ての実際にも穴が開いているのではという疑念も持たれてきた。だから財政検証発表は不可欠なのだ。

 そうした中、年金積立金運用で国内株式比率が高められた。つまり年金積立金は、ひところあおられたような「運用で増やす」幻想どころか、株式市場の「官製相場」を維持するためにつぎ込まれているのだ。

 保険料は株につぎ込まれ、支給開始年齢も繰り下げられ、さらに株を買って自助努力で資産を増やせ、70まで働けと言われる。これでは何のための年金なのか。

(社会新報2019年6月19日号・主張より)


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