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護衛艦を空母に 言葉でごまかす「専守防衛」空洞化

 政府は昨年12月18日に閣議決定した新防衛大綱および中期防に、「いずも」型ヘリ搭載護衛艦の事実上の空母化と、それに搭載するSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)機(ステルス戦闘機F35Bのこと)の導入を盛り込んだ。105機を追加購入する方針のF35のうち42機がこのF35Bだ。

 憲法上は攻撃型空母は保有できないとしてきたこととの整合性について、政府は、戦闘機を常時積まなければ攻撃型空母ではないとする。米軍のように艦載機、護衛艦がワンセットで空母打撃群(戦闘群)を編成しなければよいとしか聞こえないが、一方で岩屋防衛相は、共同訓練の際に米軍機が「いずも」を発着する可能性を認めた。日米一体で打撃力を持つことになる。

 改修後の「いずも」の呼称をめぐる迷走は、政府のうしろめたさをかえってあらわにした。「防御型空母」から「多用途運用護衛艦」になり、結局従来と同じ「多機能の護衛艦」に落ち着いた。新大綱策定を主導したのは国家安全保障会議(NSC)とされるが、まさに政治・官邸主導のごまかしが行なわれたのだ。

 自衛隊をめぐりもう一つ気がかりなのは、同20日に起きた海上自衛隊哨戒機が韓国海軍艦艇から火気管制レーダーを照射されたとされる問題だ。日韓双方の主張がぶつかり泥沼化が危惧される中、実務者間の協議を継続する必要性も強調されているが、実務者協議をすっ飛ばして最初に外交問題化したのが日本側であることは確かだ。問題が政治化すれば、互いに国内向け説明に縛られて引くに引けなくなり、双方について現場に対する統制が効いていたのかという重大問題が看過される恐れも出てくる。

 13年1月に中国海軍艦艇により同種の問題が起きたことがある。真相が曖昧なままいつのまにか手打ちが行なわれ、事態は沈静化したとの印象があるが、このことを裏側から見れば、事の継起はもちろん事態に関する全体的な文脈を無視した部分的な「事実」をめぐる応酬は、不毛な結果しか生まないことを示しているとも言えるのではないか。

 かつて米軍は、湾岸戦争後に勝手にイラク上空に設定したイラク機の飛行禁止区域を飛んでいた米軍機に対するイラク軍のレーダー照射を攻撃とみなして爆撃の口実にしたことがある。このように重大な結果を招きかねない問題も、いずも問題と同様、政治・官邸主導で扱われた。このことこそ現代の危機ではないか。

(社会新報2019年1月16日号・主張より)


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