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アベノミクス 「忖度」が演出するGDP至上主義

 安倍首相は8月12日、自民党改憲案について「次の国会に提出できるよう取りまとめを加速すべきだ」と述べ、9条への自衛隊明記に意欲を示したのに続き、同26日の同党総裁選立候補表明にあたって、改憲を前面に掲げる姿勢を押し出した。「エンジンを吹かし続ける」という演出に余念がないと見ることができる。

 しかし「エンジン吹かす」といえば、来年の選挙もにらんで首相が強調したいのは、「第2次安倍政権下で名目GDP(国内総生産)が58兆円増え過去最高の551兆円に」「引き続き600兆円を目指す」だろう。改憲を推進し、可能とする政治力を失えば、首相にとって元も子もないからだ。

 問題は、その内実だ。GDP統計基準改定による15年度のかさ上げ効果は、(当初試算を10兆円超上回る)30兆円以上とされる。まさに忖度(そんたく)政権の面目躍如ではないか。民泊などの「シェアリングエコノミー」における個人間やり取りも、次回20年度改定から算入するという。

 では、賃金はどうか。6月の毎月勤労統計調査(速報値)では、対前年同月比で見た実質賃金は2ヵ月連続増で、21年ぶりの上昇率という。このことは、企業の経営状況に依存するボーナスなどの所定外給与額の影響増大を示していると言えるが、一方で、同月発表の4月の家計消費は3ヵ月連続で前年同月比マイナスとなっており、こちらの方が国民生活の実態を反映していると思われる。実はこの1月以降、毎月勤労統計のデータから、日雇いや1ヵ月未満雇用の人の賃金が除外されているのだ。ところが、国民所得構成比に表れる賃金・俸給には、以前は営業利益のカテゴリーに算入されていた企業役員のボーナスやストックオプション行使による利益が含まれるようになっている。

 そんなにGDPの額面を大きく見せたいのか。それだけではない。まさに「実質的に」回復しているとは言えない家計所得が上がり続けているように見せかけるとともに、その上昇はあたかも企業収益増大とリンクした、そのトリクルダウン(おこぼれ)であるかのように意識させる仕組みを制度として担保している。「世界で一番企業が活躍しやすい国」の正当化だ。

 だが、働くひとり親家庭の高貧困率に象徴される再配分政策の機能不全、これに起因する格差拡大と将来不安は、「企業活躍」のアベノミクスの裏の顔であり、その本質、限界なのだ。

(社会新報2018年9月5日号・主張より)


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