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翁長知事急逝 沖縄の歴史と思い背負う新知事を

 8日の翁長雄志沖縄県知事の急逝後、辺野古をめぐる情勢はめまぐるしく動き、前倒し県知事選に向けた「オール沖縄」陣営の翁長後継候補の擁立作業は大詰めを迎えている(23日現在)。県は、埋め立て承認撤回は翁長知事の遺志だとして、土砂投入前に実行する構え。対する政府・沖縄防衛局は予告していた17日の投入は取りやめたものの、翁長さん死去翌日の9日、今回予定の区域に隣接する護岸に囲われた区域の埋め立て手続きを開始。さらに、撤回への対抗手段として起こす行政訴訟で政府が勝った場合、1日2000万円の工事遅延損害金について損害賠償請求するとの情報をリーク、県をけん制した。

 観念的な自己絶対化の危険を避けるためには、具体的な政治的発言や行為について道徳や倫理の言葉で批判することには、慎重、抑制的であるべきだ。だが、同日の記者会見での菅官房長官の発言に対しては、シンプルな糾弾を浴びせる以外の態度を思いつかない。「翁長知事の沖縄にかける思いをしっかりと受け止め、できることは全て目に見える形で実現するという強い思いの下に、全力で基地負担軽減に取り組んでいきたい」ということが、どうして辺野古新基地建設が「唯一の解決策ということに変わりない」になるのか。何を言ってるのか分からない。全くどうかしている!

 しかし、政権中枢の空虚な言葉は、逆に、翁長さんが言葉の力を感じさせる希有(けう)なる政治家だったことを際立たせてもいる。それは、沖縄県民の歴史的な共通体験に裏打ちされたものだった。15年4月、知事当選以来初めて実現した官房長官との会談で、翁長さんは「沖縄は自ら基地を提供したことは一度もない」と強調した。この言葉には、普天間基地の存在は(戦時国際法違反である)沖縄戦に伴う米軍の軍事占領の延長であること、日本の主権回復後に「銃剣とブルドーザー」による土地強奪が強化されたこと(沖縄を米軍政下に切り離した対日講和条約発効記念日を「完全な主権回復の日」として祝ったのは安倍首相と官房長官だ)、政府は公有水面を埋め立て県民の手が届かない国有地を造成するというこそくな形で新基地を造ろうとしていること、これらの全ての歴史と現在が込められている。そして、沖縄の戦後史に対する鈍感さを自覚していない政府への怒りも。

 沖縄の歴史と思いを引き継ぐ新知事を誕生させよう。

(社会新報2018年8月29日号・主張より)


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