HOME広報社会新報・主張・一覧>世界貿易戦争 自国中心主義の背景には何がある

広報

社会新報・主張

社会新報

世界貿易戦争 自国中心主義の背景には何がある

 米トランプ政権が3月、「安全保障上の配慮」を理由に鉄鋼・アルミ製品への高関税措置を決定して以降、世界経済は「貿易戦争」の様相を濃くしており、戦後資本主義世界の基本枠組みであった自由貿易体制は大きく揺さぶられている。

 中国に続きEUなども対米報復関税を発動すると、米国は輸入車への高関税の検討を発表。現状輸入車関税がすでにゼロの日本は譲歩するにも交渉手段に乏しく、途方に暮れている。

 中でも深刻化しているのは米中摩擦だ。米国は7月10日、2000億j(約22兆円)分の追加制裁措置を発表。6日に発動された制裁第1弾、7月下旬以降に実施とされる第2弾に加えられると、中国の米国からの輸入額を上回っており、中国の対抗策は弾切れ状態だが、米国はさらに中国からの輸入額全体も制裁関税の対象とすることもちらつかせ、譲歩を迫っている。

 しかも、中国の輸出品を生産している企業の多くが元をただせば外資系という実態があり、制裁は米国企業にもはね返っている。1次産品・インフラ・労働力の調達をセットとした重工業時代とは異なるハイテク時代の国際分業のあり方は、中国に発展をもたらすと同時に、世界経済の金融危機からの回復を可能とする条件となったが、歯車は逆回転の様相を呈してきた。

 一言で言えば、戦後世界経済の存立条件は、基軸通貨国としての米国の特権的地位、それと裏腹のドルの傾向的減価および財政・貿易の「双子の赤字」だった。米国の製品、投資と共にドルは世界の隅々に浸透、そして米国に還流し、国内の旺盛な製品および資金需要を支えた。このプロセスは同時に米国製品の競争力低下を伴うものであり、米経済の基軸は工業製品からIT、さらにITを活用した金融技術へとシフトした。

 これが米中摩擦の焦点が知的所有権であることの背景だ。さらに、トランプ路線はグローバル化と自由貿易に背を向けたわけではない。相対的に優位な競争力を持つ分野では市場開放と規制緩和を強力に要求する。その徹底した自国中心主義が、世界経済の要としての戦後米国の位置との違いであり、それとの矛盾だ。

 世界を席巻する排外主義的ポピュリズム。トランプ主義はその典型であるが、その台頭の条件が格差と不平等、分断の拡大であることは世界的に共通する。ならば、その方向とは異なる社会像を示すことは、民主主義の行方を左右する。

(社会新報2018年7月25日号・主張より)


HOME広報社会新報・主張・一覧>世界貿易戦争 自国中心主義の背景には何がある