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働き方改革法案 時間外労働上限規制にも曖昧な点

 「働き方改革」一括法案は、まさに「一括法案」としてさまざまな内容を盛り込んだことで、納得いく説明が行なわれていない。「ねつ造」と言われた労働時間調査データを根拠にしていたことで、裁量労働制の対象拡大は削除されたものの、同じ事情の下にあるはずの「高プロ」はなぜか撤回されていない。いわゆる「同一労働同一賃金」の実効性については議論もされていないと言っていい。

 また、時間外労働の法的上限規制の初めての導入それ自体の意義は認められるものの、労働時間規制の対象から除外する高プロとの抱き合わせに加え、その規制水準の低さが問題だ。「過労死基準では時短効果はない。かえってこの基準の労使協定を増やすだけではないのか」(22日の日比谷集会で浅倉むつ子早大教授)と危惧されている。

 さらに、労働時間の上限が「年720時間」と説明されているのは本当なのか。わざと分かりにくい建て付けにしているとしか思えない。指摘されている疑問点をおさらいすると、まず、労使間の36協定で定めることができる上限(現在は特別条項付き協定なら事実上、青天井)に関する現行労働省告示の「1ヵ月45時間・年360時間」には休日労働上限は含まれない。これが前提。次に、法案に定める時間外を含む労働時間の上限720時間は年換算の数字だが、月45時間を上回る延長労働時間および休日労働の特例を設定できるのは6ヵ月間だけだ。720時間は特例期間とそれ以外の期間を通算した合計のはずだが、注意すべきは、ここまででは残り半年は休日労働規制の適用がなくなるとも解釈できること。

 一方で法案は、休日労働を含んで1ヵ月100時間未満・6ヵ月平均80時間を超えないとの規制をかけている(これがいわゆる過労死ライン問題)。これは延長特例の半年かそれ以外の半年かを問わないものであり、通年規制そのものは長時間労働規制の観点からして当然のこととしても、結局、特例期間の6ヵ月間で1ヵ月80時間の時間外・休日労働、それ以外の6ヵ月でも1ヵ月80時間の時間外・休日労働ができるという解釈が可能となり(合計年960時間)、「年720時間」の総枠規制はどこかに行ってしまうことになるとの疑問が示されている。

 審議の焦点が高プロ撤回に置かれるのは妥当なことであるが、長時間労働是正という出発点を踏まえた全体像の議論も必要だろう。

(社会新報2018年5月30日号・主張より)


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