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日本外交不在 非核化と平和体制への構想あるか

 この稿を書いている南北首脳会談直前の時点まででも、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)問題は劇的な展開を見せ、政権浮揚を狙った日米首脳会談の「成果」はけし飛んでしまった。

 日米会談で安倍首相は、米朝首脳会談での拉致問題提起の口約束と引き換えに、日米FTA(自由貿易協定)を視野に入れた通商協議の開始合意をのまされたのに加え、会談後の会見でトランプ大統領に「われわれは日本に米国製武器の売却を促進する方法を考えている」とまで踏み込まれた。

 片や北朝鮮。金正恩朝鮮労働党委員長が秘密訪朝した米CIA長官に「完全な非核化」の意思を示したと報道されたのに続き、金委員長は4月20日、「いかなる核実験や中長距離ミサイル、大陸間弾道弾の試射も必要なくなった」と宣言し、核実験場廃棄も表明した。

 米朝会談を前に、日米は「完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄」を主張するのに対し、中朝および韓国は「段階的措置」を提唱し、食い違いが生まれている。「行動対行動」の原則を確認しつつ、検証方法などをめぐる対立から頓挫した6ヵ国協議合意後のプロセス再現が危惧される状況だ。

 だが一方的非核化要求に展望はあるのか。北朝鮮が対話路線に転じたのは「最大限の圧力の成果」と日米は言うが、圧力政策下で北朝鮮は軍備を増強、緊張が激化し、戦争の危機は危険な水準にまで高まった。

 そもそも、朝鮮半島非核化は一方的な問題ではない。米国の新NPR(核態勢見直し)には、潜水艦発射弾道ミサイル用の小型核弾頭や、水上艦搭載用の新型核巡航ミサイルの開発が盛り込まれた。弾頭が解体された核付きトマホークの復活も想定される。日韓への「戦術核持ち込み」の懸念を米国は無視できるのか。

 しかも、日本政府はこれまでの事態悪化への無策を棚に上げて、「短・中距離ミサイルを置き去りにはさせない」と息巻いているが、米国の同盟国への通常兵器での攻撃に対する核報復(核先制使用)政策、日本政府流に言えば「米国の核の傘の信頼性確保」との関連をどう整理するのか。

 さらに、政府の認定する拉致被害者全員の帰国をもって「拉致問題の解決」とし、日朝関係正常化への障害物として政治利用してきた政策を見直すのか。

 朝鮮戦争休戦協定の平和協定への転換、北東アジア非核地帯化への骨太な道筋を描くことからもう逃げられないことを悟るべきだ。

(社会新報2018年5月9日号・主張より)


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