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自民改憲案 まともな検討がなされた形跡なし

 前回本欄に続き、9条を除く自民党改憲案について検討する。

 まず、緊急事態条項。当初は国会議員の任期延長特例にとどまるとされていたが、結局、12年改憲案と同様の緊急事態下の内閣による政令制定権が盛り込まれた。「国家緊急権」の復活であり、これは現行憲法との決定的違いだ。すなわち、9条改悪案と一体のものとして戦争遂行を意識していると言わざるを得ない。

 次に新47条の「合区解消」。現行14条および44条に基づく「選挙権の平等」、43条の「全国民の代表」規定との関係が全く整理されていない。では選挙区選出参院議員が実質的に「都道府県代表」になるのなら「全国民の代表」ではなくなるのか。「ねじれ国会」のときに示される参院の「強い権限」はどうなるのか。参院は国の専管事項とされる外交や安保は扱わなくなるのか。関連して92条も改定されるが、都道府県の位置付けはどうなるのか等々、多くの問題を置き去りにした「生煮え改憲」だ。

 「政治に住民の声が届かない」と言うのなら、むしろ衆院選小選挙区と同じ「死に票」問題を内包する参院選1人区が32もある方が問題ではないのか。投票価値の平等を前提とし、それを損なわない形でも、総定数や選挙制度の見直しによる改革の選択肢はある。

 そして、教育に関する26条改憲案。初めは「幼児・高等教育の無償化」だったはずが、いつのまにか教育環境整備に対する国の努力義務規定へと変質した。そもそも日本は、高等教育無償化についての国際人権A規約の規定に対する留保を撤回しており、無償化に改憲など全く必要ない。

 しかも同条が、教育は「国の未来を切り拓(ひら)く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、」と定めていることは、教育基本法改悪以来、「法令に基づく国の教育統制」が強められていることを考えると、国の教育権限強化を裏打ちするものとして警戒せざるを得ない。前文科次官の授業に文科省が介入する現実を見れば、それは杞憂(きゆう)ではない。

 以上見たように、9条を含めた自民党「改憲4項目」のどこをとっても、問題だらけであるのと同時に、まともな議論と検討を欠いている。それは、同党が「尊重する」としている現行憲法の基本的原理に対する深い考察がなされていないことと、実は同義である。こんな改憲案の発議を間違っても許してはならない。

(社会新報2018年4月11日号・主張より)


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