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働き方改革 裁量制の撤回だけでいいはずない

 「森友文書」改ざん疑惑で国会は紛糾しているが、その直前にも政府は、でたらめな労働時間データにより「働き方改革」一括法案からの裁量労働制拡大削除と再調査の約束に追い込まれた。加藤厚労相は「1事業所の調査に1人の監督官が1日かけた」と虚勢を張っていたのだが、およそ全ての数値が信じられないという事態を前に白旗を掲げた。労政審にまともなデータが提供されなかったのだから、法案の審議会への差し戻し、さらに調査方法自体の独立した第三者による検討は必須ではないか。

 高度プロフェッショナル制度の撤回も当然の要求だ。労使の36協定(時間外・休日労働協定)も割増賃金も不要で、年間104日以上かつ4週4休(週休2日に相当)と健康診断があれば、月24日連続勤務も可能となるという制度が簡単に導入されていいはずがない。

 一括法案の他の柱についても、予断を排した慎重な検討が必要だ。労働時間の上限規制は、時間外労働と休日労働との関係が複雑で大変分かりにくい規定となっているが、要は年間合計960時間の時間外・休日労働をさせることができるということ。過労死認定基準をそのまま上限基準とすることが適当なのかどうか、徹底的に議論すべきだ。

 また、いわゆる「同一労働同一賃金」が法案で定義される見込みはない。あるのは、パート法に始まり労契法や派遣法に盛り込まれた、同一処遇の前提を労働契約の全期間にわたり「職務内容」「配置の変更範囲」が同一であることとした上で、そうでない場合は違いに応じた「均衡処遇」とするという原則だ。その均衡のサジ加減は、職務遂行能力や実績、会社への貢献期待、責任の範囲と程度などについて企業の裁量で決められることになるため、「9条への自衛隊明記」ではないが、現在の格差を追認・合法化し、裁判闘争で労働者側を封じ込める結果となる恐れが強い。「格差是正」という原点に立って「合理的な格差」を盾とする使用者側の裁量権を抑制するという方向性がなければ、労働者にとって毒まんじゅうになりかねない。

 そもそも今回の働き方改革は、安倍首相が「一億総活躍社会、日本経済再生に向けた最大のチャレンジ」と言うように、「世界で一番企業が活躍しやすい国」づくりという動機に貫かれていると見た方がよい。労働者のニーズに立脚した政策なのか見極め、そうでないものは拒否すべきだ。

(社会新報2018年3月14日号・主張より)


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