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生活保護引き下げ 憲法25条の空洞化をさらに進める

 政府は、生活保護の「生活扶助(生活費)基準」を今年から3年間かけて段階的に引き下げることを決めた。最終的な減額規模は年160億円で、1人親世帯の母子加算(子ども1人について月5000円減)を含めた減額幅の上限は5%。これにより生活扶助は生活保護受給世帯の67%で減り、単身世帯は65歳未満で81%、65歳以上で76%が減額、子どものいる世帯では(児童養育加算の対象拡大などで)57%が増え、43%が引き下げになるとされる。

 生活扶助基準見直しは13年の平均6・5%、最大10%削減に続くもの。この前後には老齢加算の廃止や住宅扶助基準・冬季加算の削減が行なわれている。

 引き下げの根拠を示すために所得階層の下位10%層(第1十分位)との比較という検証手法がとられているのは、前回13年のときと同じだ。だが実に奇妙、不可解なことに、同年の検証時、厚労省社会保障審議会の生活保護基準部会は消費水準の著しく低い単身高齢世帯について、むしろ引き上げが必要との報告を行ない、今回の検証でも、この方法の限界や影響への懸念、前回引き下げの家計への影響評価の欠如が指摘され、「新たな検証手法の検討」が課題として挙げられていたのに、これらの点は結果的にスルーされ、「引き下げありき」の結論が導かれたとしか見えないことだ。

 言うまでもなく、2割程度とされる生活保護制度の捕捉率(制度を利用する資格のある人のうちの実際に利用している人の割合)をそのままにして、所得下位層との比較を理由にして生活保護基準の引き下げを繰り返せば、「貧困のスパイラル」が進行するだけだ。具体的にはこの基準引き下げは最低賃金水準、さらに、住民税非課税限度額の引き下げを通して各種社会保険負担軽減や就学援助の基準の引き下げにつながる。

 深刻な若年労働力の供給制約に直面して「人づくり革命」を掲げ、教育費負担の軽減を看板政策とする安倍政権は、子どもは高校卒業後に働くことを前提とし、大学などに進む子ども(生活保護世帯の進学率は36%)は「世帯分離」して生活保護費を切り下げる今の制度運用を一部見直し、住宅扶助は減らさず、入学時一時金を支給するという。その代わりに、生活保護世帯の約7割の減額なのか。

 賃上げ停滞や年金改革先送りのツケを選別給付の拡大で糊塗し、最低生活保障の確立を怠ることは、未来への責任放棄ではないか。

(社会新報2018年1月17日号・主張より)


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