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戦略特区の闇 利益山分けが「成長戦略」の浅薄さ

 19日の安倍首相会見はひどかった。野党の「森友・加計疑惑」追及を念頭に、「印象操作のような議論」に対して反論する姿勢が「政策論争以外の話を盛り上げてしまった」ことが「反省」なのだという。首相が不当に影響力を行使して政策決定のあり方をゆがめたのではないかという疑惑の解明は「政策論争」ではないというのだ。共謀罪を含め「説明責任を果たしていく」というが、閉会中審査も証人喚問も拒んでおいて、一体どこで誰に説明するというのだろうか。

 加計問題は、優れて「国家戦略特区」という政策問題だ。競争力強化のために「岩盤規制を打ち砕く突破口」と位置付けられているが、この突破口は、首相と官房長官、財務相、地方創生相、経済再生相の5人の政治家、5人の民間議員のトップダウンで決められる。なぜ特定自治体を規制緩和の突破口とするという手法をとるのか、私的な利益追及や利益相反が起きる恐れへの歯止めはあるのかという疑問に対して、まともな答えがあった形跡はない。それゆえ、13日の記者会見で首相からの要請を否定し、「アリの一穴を開けるには(加計学園)1校に限るしかなかった」と語った民間議員の竹中平蔵氏(またか…)が外国人家事労働者受け入れ特区で事業者認定された人材派遣会社パソナの会長であることなどには厳しい視線が注がれている。

 戦略特区の主要分野の一つが雇用であり、当初浮上した特区内での有期雇用労働者の無期転換申し込み権事前放棄の容認は見送られたものの、雇用条件の明確化と紛争未然防止のための「雇用労働センター」の設置が実現した。研究者らの転換権発生に要する期間の5年から10年への延長措置も、特区の発想に体現される「規制改革の全国化」と位置付けられている。また、農地所有適格法人(旧農業生産法人)以外の企業の特区での農地取得がすでに解禁済みで、ここにも竹中氏関連企業(オリックス農業)が参入している。特区を「一穴」とした「企業が世界一活動しやすい国づくり」には警戒が必要なのだ。

 4月の山本地方創生相の「一番がんなのは学芸員」発言は、「インバウンド観光振興」の文脈で飛び出したものであり、この目的は特区制度の柱の一つでもある。成長戦略の突破口であり、竹中氏が「ミニ独立政府」と形容した特区制度の内実の、こうした底の浅さは何なのか。明らかに制度そのものが抱える欠陥だ。

(社会新報2017年6月28日号・主張より)


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