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改憲発言加速 説明がつかない矛盾は端から放置

 共謀罪法案の強行採決劇は、日本の民主主義の危機が決定的段階に至ったことを、多くの人々に痛感させたに違いない。一方、一部のマスコミは「共謀罪の構成要件を見直しテロ等準備罪を創設する法案」との誤った表現で世論をミスリードし、事態を覆い隠そうとしているとしか思えない。

 「テロ等準備罪」なるものは、法案のどこにも定義されていない。あるのは「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画罪」であり、かつての法案との違いは、法案の対象である2人以上の「団体」が「組織的犯罪集団」になったことと、準備行為を処罰条件としたことだけ。テロうんぬんは文字通りの印象操作なのだ。

 その準備行為をめぐる金田法相の答弁は、不信任決議案提案理由説明で「資質の欠如ぶりは憲政史上例を見ない」と明言された人物としての面目躍如だった。法案で準備行為の例示として下見が挙げられていることと関連して法相は、準備行為は外形的に判断できると強弁して「ビールと弁当を持っていたら花見」「地図と双眼鏡を持っていたら下見」と述べ、人々を驚かせた。ではスマホの地図アプリはどうなのかと突っ込みを入れたくなるが、その答弁の衝撃も冷めやらぬ中、法相は「主観面の認定なくして準備行為とは認められない」と、外形的判断の不可能性(すなわち行為の目的判断のための監視の必要性)を認める答弁を行ない、本音をさらけ出した。

 自公維3党による修正も、でたらめとしか言いようがない。取り調べ可視化およびGPS捜査の制度化の検討を付則に盛り込んだという。しかし昨年、可視化の対象を限定するとともに捜査機関の裁量による広範な例外を容認した刑訴法改正案に対し、この3党は異議を差し挟むことなく賛成した。この法案には盗聴捜査の拡大や司法取引の導入も盛り込まれ、共謀罪導入で懸念される冤罪(えんざい)の防止に逆行するものだ。また、GPS捜査の法制化を促した最高裁判断の主眼は、令状なしの捜査は違法という点にあり、任意捜査が野放しとなっている現状の追認を求めたのではない。3党修正は、捜査権限の拡大に歯止めをかけるように装いつつ、むしろ後押しするものになるだろう。

 審議すなわち時間消化と開き直る与党に対し、野党と市民は正面からその矛盾を突き、廃案への展望を切り開かなければならない。

(社会新報2017年6月7日号・主張より)


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