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首相危機扇動 戦争の惨禍をなぜ全く語らぬのか

 米ペンス副大統領を迎え、安倍首相の好戦的姿勢は止まらなくなっている。「(トランプ大統領の)『全ての選択肢がテーブルの上にある』という考え方に立って問題に対処しようとしていることは評価している」と繰り返すばかりか、「すでに(北朝鮮は)弾道ミサイルにサリンなどの化学兵器を搭載できる能力を保有している可能性もある」などと述べ、あおるだけあおってしまえという姿勢だ。

 ペンス氏との会談では「平和的解決は当然」とも述べたとされるが、その主旨はこれに続く「対話のための対話になっては意味がない」の方にあるのは明らかだし、何より、朝鮮半島有事の際の避難民流入対応に関する首相の国会答弁に対して韓国外交部が不快感を表明したことが影響したのはないか。首相は「保護に続いて上陸手続き、収容施設の設置および運営、わが国が庇護(ひご)すべきものに当たるか否かのスクリーニングといった一連の対応を想定している」と述べ、「ふるい分け」にまで言及した。「大村収容所」の時代を思い出す人もいるだろう。

 危機はあおるが、戦争のもたらす惨禍については一言も語らず、紛争の平和的解決に向けた外交努力を一切放棄する。まさか、首相は朝鮮有事をせいぜいが「対岸の火事」だと思っているのだろうか。この間の答弁では、日米のミサイル防衛(MD)協力、ついでに「核の傘」(拡大抑止)の有効性を語るとともに、「弾道ミサイル防衛にあたる米艦艇の防護」にまで言及している(これには平時における米軍武器防護のための武器使用も入る)。

 特に問題なのは、MDの「安全神話」ではないか。MDがあるから安心だという幻想をふりまき、だから米軍が先制攻撃しても心配ないという空気を醸成しながら、相手は多弾頭化など次の手をどんどん打ってくるからといって、さらなる軍備強化を正当化する。あまりに無責任ではないか。

 シリアでの化学兵器使用が報じられてから、わずか2日程度で武力攻撃が行なわれたことの意味は大きい。攻撃の準備は整えておくが、国際法上の正当化を図ろうというつもりはさらさらなかったということだからだ。あるのは感情の組織化と動員。「敵=悪」と「味方=善」の二元論に立ち、悪は武力で排除されて当然だという認識や議論の枠組みが支配する。「悪い国」には先制攻撃、「悪い人」には共謀罪で先制処罰、これがトランプ・安倍路線だ。

(社会新報2017年4月26日号・主張より)


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