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共謀罪の本質 日常的監視で「犯罪」がつくられる

 政府は共謀罪法案の原案に、「組織的犯罪集団」の前に「テロリズム集団その他の」を加えるという修正をした。だが、「テロリズム」とは何だろうか。秘密保護法などで定義されているテロリズムとは「政治上その他の主義主張に基づき、国家もしくは他人に強要し、または社会に不安もしくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、または重要な施設その他を破壊するための活動」。これは個別多数の犯罪を説明するものではなく、むしろ戦争という「国家テロ」の定義にふさわしい。実際、この規定は米軍由来との指摘がある。つまりこの追加に対象の限定作用はない。

 共謀罪は人々のコミュニケーションを監視し、思想・内心を取り締まるものだとよく言われるが、その意味の深さは想像以上だ。例えば当選したら賄賂を取ろうと共謀し、落選したので事前収賄罪は成立しなくても、事前収賄の共謀罪は成立する。行為があり結果が生じ、そこに因果関係があるという客観的要件は、共謀罪の成立には要求されない。

 そうすると対象犯罪が半分以下になったということの制約効果は乏しい。いかなる犯罪の共謀を認定するかは、当局がどんな筋書きを書くのかとほぼ等しくなるからだ。刑減免をぶら下げた共謀の自白誘導は、その強力な武器となろう。

 だからこそ盗聴などの手法が捜査の柱となるのであり、監視社会化は共謀罪導入の付随的効果などではなく、その必然的帰結だ。

 どんな共謀が監視対象となるのか。何よりまず、自民党改憲案流に言えば「公益および公の秩序」に反すると当局が判断する思想信条の表出だろう。行動に移される前の意思が問われるのだから、治安維持法下の転向強要も昔話とは言えなくなる。ここで冒頭の「テロ」の話に戻れば、公式には「政治犯」はいないことになっている日本で、テロリストとは矯正されるべき考えの持ち主の権力による総称となるのではないか。

 結果以前に成立する共謀罪のもう一つの重要な側面は、その一網打尽性だ。すでに現行の組織的犯罪処罰法(共謀罪法はその改正案)においても、組織内に犯罪を行なっているという認識のない構成員がいたとしても、犯罪実行目的の組織という認定には影響しないという運用が行なわれている。団体内の一部で犯罪実行の合意(共謀)が認められれば、その団体は組織的犯罪集団になり、その構成員全部が犯罪集団のメンバーと見なされる可能性は強い。

(社会新報2017年3月22日号・主張より)


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