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トランプ外交 取引にほんろうされ足元見られる

 世界の耳目を集める米トランプ政権。対ロ外交をめぐり大統領補佐官が辞任した一幕は、政権内部の暗闘の激化をうかがわせる。しかも、その手段が「情報」である点に、政治エリート(外国首脳も)をも例外としない情報機関の権力行使の特徴が表れている。

 こうした激動の渦中で2月10日(現地時間)に行なわれた日米首脳会談。官邸周辺からは「百点満点」「満額回答」「ホームラン」などの自画自賛しか聞こえてこないが、大丈夫なのか。

 安倍首相は、「日米安保条約5条が尖閣諸島に適用されることを確認した」のが最大の成果だという。しかし、トランプ大統領は日米会談の前日9日、中国の習国家主席と電話会談して「米国政府は『一つの中国政策』を堅持する」と表明、昨年12月の蔡台湾総統との電話会談以来の対中政策の動揺に、自らふたをした。

 恐るべしディール(取引)外交。これが「アメリカ・ファースト」だ。片や首相は、オバマ前政権と変わらない「安保5条への言及」を引き出すのと引き換えに「日米経済対話」に道を開き、米国製武器の購入は「米国の経済や雇用にも貢献する」と言ってのけた。

 この眺めには既視感がある。日本の「残存主権」を前提に沖縄の施政権が日本に返還されたのに伴い、尖閣諸島の施政権も返還されたが、米国は尖閣の領有権(主権)の帰属については判断しない「中立の立場」をとった。台湾との関係、そして中国との正式国交正常化をにらんでの決定だ。

 「わが国固有の領土」であるはずの尖閣の大正島、久場島で沖縄返還前から米軍に提供されている射爆場は、その後も中国名で「赤尾嶼射爆撃場」「黄尾嶼射爆撃場」と呼ばれ続け、日本政府はこれに異を唱えたことはない。というより、なす術がなかったのだ。

 周知のごとく政府は日中間「棚上げ合意」を否定して尖閣を国有化した。この政府に今後の領土問題打開に向けて何か妙案があるのかと言えば、恐らくない。しかし、「ない」という無策によってこそ、ある種のナショナリズムは裏打ちされる。首相が「安保5条」「安保5条」と繰り返せば繰り返すほど、中国脅威論が伝播(でんぱ)され、いわば「常識」として国民に刷り込まれるという仕掛けだろう。

 だが、こうした首相の思惑を、トランプ取引外交は多分一顧だにしないだろう。「日米同盟」にすがるしかない首相には、対米譲歩しか道がなくなっている。

(社会新報2017年3月1日号・主張より)


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