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南スーダン戦闘 事実歪め文民統制と立憲主義壊す

 オルタナ(オルタナティブ)・ファクト(もう一つの真実)。トランプ米大統領の就任式の参加者数を大統領報道官が「過去最多」と言い、これに疑問が呈されると、大統領顧問が「オルタナ・ファクト」と言い放ったことで、一気に世界中に浸透した言葉だ。

 これを地で行く事態が、いま日本で進行している。南スーダンで再発した内戦を「戦闘」と報告したPKO派遣の陸上自衛隊の「日報」をめぐる問題だ。

 防衛省が「廃棄した」としていったん不開示決定した日報が、昨年12月末に「発見」された。だが、この事実は1ヵ月間、稲田防衛相に伏せられていた。この間に、安倍首相は日報の管理について「公文書管理の関係法令、規則に基づいて扱っている」と答弁。このことについて問われた首相は「その時点で破棄した前提で見ていた」と答えた。首相らが知らなかったのだとすれば、防衛省・自衛隊が隠していたことになる。

 「戦闘」との記述について聞かれた防衛相は「法的な意味での戦闘行為ではなかった」「憲法9条上の問題になる言葉は使うべきでないことから武力衝突という言葉を使っている」と答弁した。内戦勃発当時の中谷防衛相への報告でも「戦闘」の語はなく、「戦闘ではなく衝突」は当初からのものであることが分かる。

 第1に、自衛隊が文民閣僚に情報を隠ぺいするという文民統制の蹂躙(じゅうりん)。第2に、9条があるから事実をねじ曲げ、戦闘を衝突にするのだという逆立ちした論理。国連安保理が10日、南スーダンで続く戦闘を非難し即時停戦を求める声明を出しているにもかかわらずだ。海外での武力行使(国家の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為)は違憲であり、自衛隊員は戦闘行為(国際的な武力行使の一環として行なわれる人を殺傷しまたは破壊する行為)はできない。とすると、もし隊員が武器を使えば、その責任は個々の隊員に帰されることになる。そこで万一武器使用をためらった隊員が銃弾に倒れるようなことがあれば、それは武器使用を制約する憲法のせいであり、改憲しなければ隊員の命は守れない。首相の頭の中にある筋書きはこういうものだろう。

 一方で首相は、シリア内戦は戦闘か衝突かと問われ、対IS戦後方支援はしないので「検討していない」と述べた。憲法ではなく政策判断。それを正当化するのがオルタナ・ファクトだ。

(社会新報2017年2月22日号・主張より)


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