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米入国措置 トランプ命令問題は人ごとではない

 トランプ米新大統領が1月27日、中東・アフリカ7ヵ国の市民や難民の入国を禁止する大統領令を発令して以降生まれた混乱は、この措置に従わないよう通知を行なった米司法省トップの司法長官代理が解任されるという事態に発展した。米政府によると、この7ヵ国の721人が航空機への搭乗を拒否されたという。

 トランプ大統領は、禁止対象としていないイスラム教国があることを逆手に取って「イスラム教徒の入国禁止ではない」とする一方、「中東で大勢のキリスト教徒が処刑されている」と宗教対立をあおる発言をしており、その支離滅裂ぶりはもはや常軌を逸している。

 ところが安倍首相は、欧米各国首脳や国連事務総長らから批判や懸念表明が相次いでいるのに、「コメントする立場にない」の一点張り。これは内政問題だというのだ。米国内外からの批判は、国際法や米憲法からの背反を指摘しているのに、首相がこうした観点を考慮した形跡はない。まさに「反立憲」政権の面目躍如と言うしかない状況だ。

 「われわれは米国を支援し、米国民を深く愛する者のみの入国を許可したい」

 発令を前に発せられた大統領のこの言葉は、実は(米国を日本に変えて)首相のものだと言われても、そう不自然ではない。シリアが最大の難民発生国となって以降、日本への難民申請者数は前年比5割以上の急増を見せたが、認定者数は13年に6人、14年11人、15年に27人。同年には7586人が申請を行なっており、認定率は1%にも満たず、うちシリア人認定者は3人。トランプ政権が半減させるというオバマ前政権決定の「第三国定住」方式による年間受け入れ枠は11万人だが、日本は30人。比較の対象ですらない。首相が表明した5年間で150人のシリア難民の留学生枠での受け入れは、悪いことではないにせよ、ひっかかるものがある。受け入れ国支援などとして2800億円を拠出する方針も、普遍的価値観より国益に照らして選別的に実施されるという懸念がぬぐい去れない。

 敗戦後の日本は、憲法施行前日の最後の勅令(外国人登録令)で旧植民地出身者(朝鮮人・台湾人)を「外国人とみなす」とし、対日講和条約発効と同時に一片の行政通達で日本国籍を最終的に奪った。旧植民地出身者は「援護法」の適用から除外されたが、BC戦犯の刑は執行された。大統領令問題は、遠い国の偏狭な権力者の話ではない。

(社会新報2017年2月8日号・主張より)


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