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アベノミクス 袋小路に陥った「初めに成長ありき」

 安倍首相は年頭から「アベノミクス」の成果のアピールに余念がない。いわく、賃金を上げた、雇用を増やした、景気を回復させた、と。どれも本当ではない。

 実質賃金は昨年、連続低下からは一定脱したというものの、一進一退の状況であり、いわば頭打ちだ。ピーク時の97年を100とすれば、15年の水準は92にとどまる。何よりも、12年末の第2次安倍政権発足以来の低下幅は5%を超え、いまだ回復できていない。また増えた雇用は非正規だけで、正社員は減っている。これが実質賃金低下の背景となり、家計消費支出は14年から2年連続で下がった。

 景気回復には収入減と負担増に苦しむ所得下位層の底上げが不可欠なことは、衆目の一致するところだろう。しかし、財政の制約が強調されることが多い。実際のところはどうなのか。

 今日、日銀の保有国債は410兆円を上回り、国債残高の38%に達している。これは裏を返せば、政府の対民間債務を日銀が肩代わりしたことになる。理屈上は、中央銀行の金融緩和(貨幣供給)と政府の財政支出が増えても、需要と供給の拡大均衡が実現すれば悪いインフレにはならず、日銀は金融引き締め(保有国債売却)をすることなく、国債を持ち続けられる(いわゆる塩漬け)。だから財政出動を恐れることはないという結論もあり得る。

 だが、日銀が年間60〜70兆円規模で供給した資金は市中に回っていない。日銀が民間銀行から購入した国債の代金はそのまま銀行の日銀当座預金に積み上がっているだけで、需要拡大につながっていない。マイナス金利政策導入による国債利回り低下で銀行は国債を買うのを嫌うようになっており、デフレ脱却・物価上昇目標が事実上放棄される中、金融緩和政策は文字どおり剣が峰に立っている。

 少子・高齢化対策は誰もが言うが、政府の政策の問題点は、人口減という成長制約要因の克服という目的に引きずられ、逆効果をもたらす施策が盛り込まれていることだ。「1億総活躍」という名の「1億総労働」社会を目指し、社会保障への依存を減らすと同時に、「長時間労働是正」を掲げて生産性を向上させる。「柔軟な働き方」で労働時間規制を緩め、「非正規という言葉をなくす」と称して「総非正規化」で人件費を減らす。これでは将来不安は解消できない。安心して働き続けられる、働けなくなっても安全網があるという環境整備が第一だ。

(社会新報2017年1月25日号・主張より)


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