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安倍外交破綻 メンツでTPP批准なら状況悪化

 安倍外交の行き詰まりが顕著だ。ロシアのプーチン大統領は安倍首相との会談でロシアの主権を前提とした北方領土の「共同経済活動」を提案し、領土交渉の打開は望み薄となった。辞任要求にさらされる韓国の朴槿恵大統領は統治能力を失い、日韓「慰安婦」合意の行方は不透明に。ベトナム国会は日本からの輸入原発の建設計画中止を議決した。極め付きは、原発輸出などと並んで「成長戦略」の柱と位置付けられていたはずのTPP(環太平洋経済連携協定)だ。トランプ米次期大統領は首相との会談直後、「就任初日にTPPから離脱する」と宣言した。

 それでもなお、首相はTPPを批准すると息巻いている。その際首相は、「保護主義か自由貿易か」と問題を単純に図式化した上で、自由貿易こそ相互に利益をもたらすと強調する。首相らが持ち出すのは、自由貿易において各経済主体がそれぞれ最も優位な産業分野に特化することで互いに利益を得ると説いた、あのリカードの比較生産費説だ。

 だが、この説が前提とする自由貿易では、資本や労働力は国境を越えて移動せず、いわゆる「中間財貿易」も捨象されている。それゆえ、多国籍企業が国境を越えて自由に活動し、いわゆる「バリューチェーン」を形成している現代のグローバル経済とは合致しない。すなわち、ざっくり言えば、比較生産費説が約束した貿易量増大や実質賃金上昇が実現するとは限らない。

 このことを現実の問題として示したのが、トランプ勝利の背後にあるとされる、北米自由貿易協定(NAFTA)のもたらした状況だろう。メキシコ農民は食えなくなり、多くの者が米国に向かい、低賃金労働者の増大によって米国の実質賃金は停滞を続けている。

 ノーベル賞学者のスティグリッツ氏が、TPPは自由な貿易協定ではなく特定の団体(多国籍企業)の利益のための「管理貿易協定」だと批判したことは、今やよく知られている。「米国がルールを書く」とはそういう意味であり、それが広範な人々に上から押しつけられることが問題なのであり、「米国か中国か」という設問はミスリードだ。

 そのトランプ氏がTPPに代わる2国間協議を推進するとしていることは、TPPが発効しなくても、その批准の帰結を危険なものにする。すでに多くの指摘にあるように、TPPが日米協議のスタートラインにされるおそれが強いからだ。引き返すなら今しかない。

(社会新報2016年12月7日号・主張より)


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