HOME広報社会新報・主張・一覧>PKO新任務 安倍首相は一体何を待っているのか

広報

社会新報・主張

社会新報

PKO新任務 安倍首相は一体何を待っているのか

 「駆け付け警護」などの新任務を付与された陸上自衛隊の南スーダンPKO(国連平和維持活動)派遣部隊が20日、出発した。前日19日の壮行会で稲田朋美防衛相は「自衛隊の国際平和協力の歴史の中で新たな一歩となる」と述べた。二歩、三歩目があると明確に示唆したのだ。南スーダンPKOの壮行会には初出席だという制服組トップの河野克俊統幕長は、同15日の閣議決定後の会見で「新たな権限が付与され本来あるべき姿になった」と述べた。「文官統制」(日本型文民統制)が崩れた後の「本来あるべき姿」を誇示したというところだろう。

 政府の考え方は、同日示した「新任務付与に関する基本的な考え方」によく表れている。まず「駆け付け警護」については、「ジュバ市内を中心に少数ながら邦人が滞在しており、邦人に不測の事態が生じる可能性は皆無ではない」と邦人保護を強調し、「他国の軍人を『駆け付け警護』することは想定されない」とする。しかし、その邦人数については「約20人」という注を正直に付けざるを得なかった。それはそうだ。7月の内戦再発を受け政府は空自輸送機3機を飛び立たせたが、大使館関係者ら47人はこれを待たずに民間チャーター機で国外に移り、輸送機は1機が大使館員4人をジブチの自衛隊海外拠点に運んだだけだったのだから。しかも、首都になおも残る20人に「不測の事態」が起きるという状況は、停戦合意などのPKO参加5原則が満たされている状態ではとてもあり得ない。

 それでも政府は、5原則に関する判断は「実態面」とは別の「法的判断」であり、「国家または国家に準ずる組織の間で武力を用いた争いが生じているか」という点の判断だとした上で、「武力紛争の当事者(紛争当事者)となり得る『国家に準ずる組織』は存在しておらず、PKO法上の『武力紛争』が発生したとは考えていない」と断定する。

 実は自衛隊は当然、武器使用マニュアルを用意している。だが、このマニュアルを含むイラク派遣時の「隊員必携」を新聞社がかつて情報公開請求したところ、自衛隊法上の秘密ともされていなかったのに、4分の1が黒塗りだった。

 「実態面」は隠し通す。その上で、もし隊員に「不測の事態」があれば、それは武力行使を禁じ武器使用を制約する憲法9条のせいにする。これが安倍首相の頭にある筋書きだということは、全く想像に難くない。

(社会新報2016年11月30日号・主張より)


HOME広報社会新報・主張・一覧>PKO新任務 安倍首相は一体何を待っているのか