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TPP審議 「外交秘密」隠れみのに根拠示さず

 与党はTPP(環太平洋経済連携協定)承認案の衆院通過をもくろんでいる(2日現在)。文字どおり将来に禍根を残す暴挙であり、強く断罪に値する。

 なぜか。安倍首相自身の言葉が、問題をまさに集約している。首相は10月31日、「このまま無為に時を過ごせば、(米次期大統領から)再交渉を求められる事態にもなりかねない」と答弁した。交渉経過資料は全て黒塗り、協定文の全訳はなし、出したものは誤訳だらけという対応をとっておいて、国会審議が「無為」だとは、一体どの口で言えるのか。

 しかも、日本が最初に批准手続きを完了すれば再交渉は避けられるという理屈は理解不能だ。TPPには、米豪など農産物輸出5ヵ国の要請に基づき、協定発効7年後に、「市場アクセスを増大させる観点から」関税などについて協議を行なうとの定めがある。これが再協議でなくて何なのか。

 しかも、首相は農林水産品関税品目のうち約2割が関税撤廃の例外品目とされたことを成果として押し出すが、TPPは、関税引き上げまたは新関税の採用禁止、関税の漸進的撤廃、さらに撤廃時期の繰り上げ検討のための協議を締約国に義務づけている。TPPには関税撤廃促進の仕掛けが組み込まれているのだ。

 衆院審議では、関心の高さを反映して「食の安全」問題も多く取り上げられたが、政府側は「日本の制度変更が必要となる規定は設けられていない」と一点張りだった。本当だろうか(米国産輸入牛肉の検査基準見直しという影響がすでに出ているわけだが)。

 10月27日の参考人質疑で鈴木宣弘東大教授は、協定7章9条(科学および危険性の分析)2項に言及した。ここでは自国の衛生植物検疫(SPS)措置について「国際的な基準、指針もしくは勧告に適合していない場合には当該SPS措置に合理的に関連する記録された、客観的で科学的な証拠に基づいていることを確保する」とあり(加えて、この規定について協定の紛争解決規定による解決を求めてはならないとしている)、鈴木教授はその意味について「科学的根拠を示せない限りそれ(輸入規制)を緩めさせるということがどんどん起こる」と指摘した。

 こうして見ると、批准すれば再交渉はない、あるいは、食の安全基準に影響はないなどの主張の根拠は示されていないし、追及されても「保秘契約」を盾に逃げる。これは民主主義の破壊そのものではないか。

(社会新報2016年11月9日号・主張より)


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