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SBS米価格 「TPPの影響ゼロ」の根拠は喪失

 外国産輸入米が公表価格より安値で流通している可能性がある問題(いわゆるSBS米問題)で、農水省は7日、対象業者の4割で「調整金(販促費)」と呼ばれる金銭のやりとりがあったとの調査結果を公表した。「国産米の価格に影響を与えている事実は確認できなかった」と結論づける一方、今後調整金を禁止する(SBSの契約書に金銭取引をしないことを明記させる)との方針を示した。

 実に矛盾した結論だ。この問題を考えるために、SBS(売買同時入札)の仕組みをおさらいしてみよう。輸入業者(商社)は1`約105円で買った輸入米を国に約145円で売り渡す。国は、これとは別に「手数料」の位置付けで輸入業者からマークアップ(差額)を約49円取り、計約194円で卸業者に売る。これが輸入米の価格構造に関する国の表向きの説明であり、これで市場価格は国産米とほぼ同水準になるとする。

 ところが実際には商社がもうけの中から約40円の調整金を裏で卸業者に支払っており、実際の流通価格は建前より安い約154円だったというのだ。商社が卸業者に訴えられた訴訟の判決で東京地裁が「調整金を差し引いた額が輸入米の実質的取引価格」と認定したことでこれが明るみに出た。

 この問題の根が深いのは、SBS制度は国が関与する制度であり、商社からの買い入れ価格や卸業者への売り渡し価格も、農水省が決めていることだ。政府買い入れ予定価格を高めに設定し、商社の利益を十分確保しつつ卸業者に調整金を支払うことのできるように価格操作を行ない、外米の市場消化を促してきたという疑いがある。

 政府は、現在の年10万dのSBS米枠にTPP(環太平洋経済連携協定)で7・8万dの特別枠を加えても、国内産米価への影響はないとしてきたが、今回の問題発覚で、その前提は大きく崩れた。TPPの影響試算をやり直せという声が強まるのは当然のことだ。

 そもそも政府の農業への影響額試算は、13年の試算では4兆円の減少だったのが、15年には1500億円の減少と、何と20分の1に縮小したという代物。代わりにプラス効果は4倍以上に膨らみ、TPP発効後10〜20年にGDPは13・6兆円、雇用は79・5万人増えるのだという。この誇大妄想的な数字はさておき、農業影響額について政府は、TPP対策費によるプラス効果と相殺されるとも言ってきた。結局、まともな試算は示されていないのだ。

(社会新報2016年10月19日号・主張より)


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