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核先制不使用 なぜ日本がブレーキ役になるのか

 安倍首相は20日、米オバマ政権が検討している核兵器の先制不使用政策への懸念をハリス米太平洋軍司令官に伝えたとの米紙報道をようやく否定した。白々しいと言うほかない。当該の報道は15日だが、安倍政権が反対しているとの報道は7月からあったにもかかわらず、首相は何の反応も示してこなかったのだから。

 先制不使用とは、米国またはその同盟国が核攻撃を受けた場合にしか核を使わないこと。核の役割を核攻撃を受けた場合に核で報復すると脅すことで核攻撃を抑止すること(あるいは実際に報復すること)に限定する核の「唯一の役割」政策とも言う。「他の国が先制不使用の約束を守らないかもしれない」ことが懸念材料だとよく言われるが、仮に他国が約束を破った場合には米国による核報復の可能性が留保されているのであり、これこそ核抑止の考え方ということになる。一般に同盟の「核の傘」、拡大核抑止とは、このように理解されてきたはずだ。

 ところが日本政府は、先制不使用宣言をすれば「通常兵器で攻撃する限り核攻撃を受けないという誤ったメッセージ」を送ることになり、「核の傘」の抑止力が成り立たないとして、これに反対してきた。とすれば、政府は米国による核先制使用のシナリオを想定し、さらに支持していることになる。この政府は核の究極的廃絶を目指すと言うのだが、では一体どうやるつもりなのか。これでは、非核地帯宣言の域内国に核保有国が核攻撃をしないことを条約で保証する非核地帯設置構想を推進するという発想が出てくるはずもない。

 日本の態度が重要な意味を持ってくるのは、先制不使用に反対する米国内の意見が、その根拠として、日本の懸念を無視すると日本の核武装を招きかねないことを挙げるという現実があるためだ。これを知ってか知らずか稲田防衛相は、自衛のための必要最小限度の範囲なら核保有は違憲ではないとする60年岸首相答弁以来の政府の立場を、あらためて強調してみせた。

 しかし、元国務省幹部のハルペリン氏ら14人の7月27日付の日本政府宛て公開書簡にあるように、「米国の通常戦力の強さからすれば、核兵器を先に使うオプションの維持は、他の核兵器国もこのオプションを維持すべきとのメッセージになってしまい、また、核兵器を持っていない国に核武装を奨励することになり得る」というのが真実だ。口先だけの非核化はもういい。

(社会新報2016年8月31日号・主張より)


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