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PKO新任務 しないはずの武力行使の恐れ拡大

 陸上自衛隊員約350人がPKO(国連平和維持活動)派遣されている南スーダンで7月8日に内戦が再発し、首都ジュバにいる日本人の退避問題が持ち上がったが、これは実に奇妙な展開をたどった。政府は航空自衛隊輸送機3機の派遣を決定するとともに、安保法制整備で可能となった新任務ではないPKO協力法の陸上輸送任務として陸自による輸送を検討した。だが、大使館関係者ら47人は輸送機到着を待たずに民間チャーター機で国外に移動。輸送機は1機が大使館員4人を事実上自衛隊の海外基地となっているジブチに運んだだけで、同23日には同国から撤収した。「自衛隊機派遣ありき」ではなかったかと疑われるゆえんだ。

 他方、残った日本大使ら2人は陸自宿営地に避難。自衛隊は、その宿営地内で流れ弾とみられる弾頭が見つかったことを認めた(3月に発覚するも、真相は曖昧にされた「着弾した小銃弾」展示問題を意識した対応だろう)。すなわち、民間機でも退避できたということとは別の問題として、現地は停戦合意などのPKO参加5原則が満たされた状態なのかが、あらためて問われることとなった。

 しかし政府の答えは、撤退を否定するという点で、予想を裏切らなかったし、今後もそう予想される。なぜか。自衛隊の前には「国または国に準ずる組織」が敵対勢力として登場せず、自衛隊が武力紛争の当事者とならないことが、あらかじめ前提とされているからだ。現実は、この与件に基づいて解釈されるのだ。

 この事態がはらむ無理は、自衛隊に新任務が付与されると、確実に大きくなっていく。他国軍隊などの「駆けつけ警護」や治安維持活動という新任務においては、任務遂行のための武器使用が認められるが、自衛隊は武力行使をしないことが建前となっているため、危害射撃要件は従来の正当防衛・緊急避難のままなのだ。

 加えて、隊員の国際法上の地位が不明確だ。民間人を誤射してしまったら、現地法で訴追されるのか、日本の刑法の国外犯処罰規定が適用されるのか。その場合、任務を命じた国の責任はどうなるのか。紛争当事者でないなら捕虜待遇を受けることはできないが、ならば保護されるべき文民とも言えない。紛争当事者でないなら戦時国際法の適用対象にならないと考えられるが、では自衛隊の武器使用は国際法の範囲外なのか。多くが曖昧なままリスクだけが拡大することになる。

(社会新報2016年8月3日号・主張より)


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