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成長主義の陥穽 展望ないのに「道半ば」と検証拒む

 与党勝利に終わった参院選の総括には重要な論点がある。「アベノミクスは道半ば。もっと前に進める」との訴えは、果たして本当に支持されたのか、支持されたのだとしたら、それはなぜなのかという問題だ。

 この間、家計の貯蓄率は急激な低下を遂げ、貯蓄ゼロ世帯が3割を超えるまでになった。将来不安は多くの人々の上に暗雲となって垂れ込めている。そのとき、「成長すれば賃金が上がり貯蓄もできる」という安倍首相の訴えは、まさにすがるしかない1本のわらになっているのだと言える。井手英策・慶大教授が言う「成長しないと生きていけない社会」で生きていくことが前提となっている限り、そう思うしかないのだ。

 政府が6月18日に決定した「1億総活躍プラン」には、同一労働同一賃金や長時間労働の是正など、魅力的な言葉が並ぶ。だが、これらを実現するための具体的決め手が明らかにされないのに加え、同じ政府が、派遣労働の利用拡大や「残業させ放題法」の制定など、「総活躍プラン」と矛盾する政策を進めている。

 これは一体どういうことか。結局、政府の政策は「新3本の矢」、特にその中軸である「GDP600兆円」実現のためのメニューなのだ。言わば成長のための「1億総活躍」。しかし、この近未来展望はリアルなものだと言えるのか。

 首相の自民党総裁任期延長問題と絡めてのことであるが、同党の野田聖子前総務会長が7月18日に発した「東京五輪後は暗黒の時代が来る」との言葉は注目に値する。人口が減る中、五輪特需で「成長」を演出するには限界があり、再びゼロ成長が常態化するという冷徹な時代認識が示されているからだ。実際、マイナス金利と日銀の国債大量購入で政権は現在、財政出動への傾斜を強めているものの、黒田金融緩和の限界露呈はすぐそこまで来ており、後はヘリコプターマネー(政府紙幣のばらまきか日銀による元利払いの必要のない国債の直接引き受けか)しか打つ手は残っていないという捨て鉢な声も聞かれるようになってきている。

 首相は「野党は批判ばかり」と野党を批判した。だが、アベノミクスの成長至上路線の土俵の上で成長政策の有効性を競うというやり方に、もはや現実性はない。憲法を問わない選挙で得られた改憲論議の土俵が立憲主義の観点から正統性を欠くのと同様、いつまでたっても「道半ば」の成長主義も、ごまかしなのだ。

(社会新報2016年7月27日号・主張より)


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