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改憲派3分の2 「答えだけ求める」危険な政治詐術

 与党が勝利した参院選から一夜明けると、安倍首相は突然冗舌になった。首相は11日の会見で「わが党の案をベースにしながら(衆参の)3分の2を構築していく。それがまさに政治の技術だ」と言い放った。

 首相はすでに開票が進む中で出演したテレビ番組で、与党勝利が確実となった情勢を背に、「どの条文を変えていくかについては、谷垣総裁時代に憲法改正草案をお示ししている」「前文から全てを含めて変えたい」と本音を連発していた。

 9条の破壊を眼目とする自民改憲案を押し出す一方で、首相は「憲法審査会で議論しながら、国民的な理解が高まる中で、どういう条文か収れんしていくことが期待される」とし、「野党を含めた3分の2」での合意形成を重視する姿勢を示している。だが、この当然と言えば当然の話の目的は、とにかく野党を改憲論議の土俵に乗せることだ。このとき「どの条文をどういうふうに変えていくかが大事で、憲法改正にイエスかノーかは今の段階ではあまり意味がない」との首相の言葉は、居丈高な響きを帯びてくる。これが首相の言う「政治の技術」だ。

 首相は、参院選で憲法を語らない理由を、「憲法改正を国民に問うのは国民投票」であることに求めていた。しかし、これほど国民を愚ろうした話はないだろう。審査会の舞台裏で与党間の、さらに改憲志向の諸党との駆け引きの結果が出たら、国民は「イエスかノーか」だけを答えればいいと言っているのだから。議論の素材の提供より宣伝扇動が優先される中で行なわれる国民投票の破壊力を、先の英国の国民投票で世界は見せつけられたはずだ。

 いかにも、国民投票は諸刃の剣だ。もし改憲案が否決されたら、その結果は自民党のアイデンティティの背骨を打ち砕くことになる。だから、改憲を「立党以来の悲願」に棚上げしたままにしない首相の登場は、自民党にとっても最大の賭けなのだ。このとき、これと対決する勢力が依拠できるのは、「この(改憲の)流れに抗(あらが)う新たな市民の力が大きく育っていること」(11日の声明で平和フォーラムの勝島一博事務局長)以外にはない。

 冒頭に触れた会見で国民は、宣伝された「アベノミクスの果実を津々浦々にまで行き渡らせる」とは「新幹線」の大公共工事のことだということを再確認させられた。この手のごまかしが長続きするわけないし、続けさせてはいけない。

(社会新報2016年7月15日号・主張より)


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