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英国EU離脱 格差拡大が生み出した危機的展開

 移民は抑制するが、単一市場へのアクセスは維持するだって? 72%以上という高投票率となった6月23日の国民投票の結果、3・8%差で英国のEU(欧州連合)離脱が決定して以降、離脱派の「つまみ食い」的主張への疑問が急速に広がっている。英国はそもそも、共通通貨ユーロにも国境審査なしの出入国を認めるシェンゲン協定にも参加せず、ギリシャ危機を受けて財政規律を強化しようとしたEU基本条約の改定にも反対の立場だった(結果的に改定は見送り)。英国の金融業営業免許があればEU全域で営業ができるシングル・パスポート・ルールを享受してきた英国資本主義の主柱、シティーの落日は、遠からず現実となるだろう。

 今回の結果に快哉を叫んでいるのが各国の右派ポピュリスト政党だという事態は、EUをめぐる複雑な問題状況を表現している。端的に言って現在のEUは、「資本にとって自由なヨーロッパ」を望む勢力と「社会的ヨーロッパ」を目指す勢力の、同床異夢的な力学の産物だ。通貨は統合されたが、財政は統合されているわけではない(しろと言っているわけではないが)。EU内の競争は、むき出しの賃金コストと労働生産性を反映するものとなり、域内の経済格差はあからさまなものとなった。EU問題をグローバル資本主義の問題と捉える視点が必要だ。

 投票結果が階級や年代、都市部と地方の間で異なり(低所得層は離脱支持)、また教育格差を反映している事実は、そのことの表れだ。中間層が二極化していく中で、人々は国民国家による庇護(ひご)を求める。しかし、国家にかつてのような力はない。そこで醸成されるフラストレーションは、「トランプ現象」という形を取る。「移民問題」とはあくまで象徴でしかないのだ。

 北アイルランドとスコットランドでは残留が離脱を上回ったことは、別の側面から問題を象徴するものだ。国民国家の相対化は、国境を越えた広域的な地域統合と、国境をまたぐこともある自治体レベルの地域への回帰および、その相互補完的展開を生み出す。英国がEUを脱退してもその太い流れは変わらないだろう。いかに遠い道のりでも、格差を縮める社会的ヨーロッパを目指す以外に経済生活と民主主義の危機を乗り越える道筋はないことも、確認しておかねばならない。

 民主主義の点では、国民投票に局面打開を頼ったキャメロン首相の判断の甘さも、大きな教訓を残した。

(社会新報2016年7月6日号・主張より)


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