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アベノミクス 「言った者勝ち」にもうだまされるな

 参院選の本格的な幕開けを告げる党首討論会で、アベノミクスの誇大宣伝は見過ごせぬレベルに達した。

 安倍首相が冒頭に語り、自民党の公約集でも頭に登場する「史上初めて有効求人倍率が全都道府県で1を超えた」という自慢話。一方で首相は、生産年齢人口が減る中で名目GDPを増やしたと胸を張ったが、この減少の求人倍率への反映は考慮しないのか。しかも、正社員の求人は1未満だ。

 「正社員は8年ぶりに26万人増えた」。これは昨年1年間の話だ。実は13〜14年と減り続け、第2次政権発足時の水準を回復していない。その間、非正規は増え続け、その比率は最高を更新し続けている。こちらの方が重大ではないのか。

 実質賃金はどうか。首相は「5年前から減っていた」と認めつつ、これは消費増税による物価上昇に賃金が追いつかなかったからで、この3ヵ月は上昇に転じたと強調した。だが、税率8%への引き上げは14年4月からであり、安倍政権の下で低下が続いてきたことの説明にはなっていない。

 首相はまた、公約集の36兆円からさらに数字を積んで「国民総所得をすでに40兆円取り戻した」と豪語した。この国民総所得には企業活動による海外からの所得が含まれ、投資収益や1次産品の価格下落による実質的所得増も加味される。つまり国内総生産より「盛る」ことができるのだ。

 このように結論ありきで、都合のよい起算点を設定したり、都合のよい指標だけを取り出せば、何とでも言えよう。加えて、首相が誇る「果実」の内実たるや、金融緩和による円安誘導と政府年金資金による買い支えで、海外投資家が間違いなく得をする株式市場をつくり上げることによって演出されたものでしかない。

 他方、黒田日銀総裁が「2年程度での実現はできなかった」とようやく認めた「2年で2%」の物価上昇目標について、首相は「日銀が判断すること」とつれなく語り、アベノミクスの金看板をこっそりしまい込んで平然としている。

 首相が実績を粉飾しようとしていることは疑いない。しかし、それにも増して警戒すべきは、「この世の中から非正規という言葉をなくしていきたい」という首相の言明だ。「働き方改革」の具体論として「日本再興戦略16」の中に「残業代ゼロ法」や「解雇の金銭解決」を並べてみせた首相の言葉の真意は、全員の「非正規化」以外ではないだろう。だまされてはいけない。

(社会新報2016年6月29日号・主張より)


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