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パナマ文書 公正課税で世界をリードできるか

 タックスヘイブン(租税回避地)に設立された法人に関する「パナマ文書」の情報が10日に公開され、伊勢志摩サミットを前に波紋が世界中に広がっている。富豪や企業がタックスヘイブンを使って「合法的」に脱税することで失われた税収は、企業関係で年間1000億〜2400億j(11兆円〜26・4兆円)、個人関係で1900億j(21兆円)、計50兆円近くに上るとされ、フランスのピケティ氏らが賛同署名した国際NGOオックスファムの各国指導者向け書簡では、少なくとも1700億jとの数字を挙げている。消費増税など軽く吹き飛ぶ額だ。

 日本政府は、サミットでは租税回避対策を重要課題と位置付けるという。しかし、タックスヘイブン全体に秘匿されている資金量は3000兆円規模との指摘がある中でも、政府はタックスヘイブンの利用実態の調査と公表に前向きとは言えない姿勢をとっている。

 日本に居住する者が全世界で得た所得は課税対象との原則にのっとり、日本ではこの間、国外財産などの調書制度の整備が進んでいる。問題は納税がきちんと行なわれているのかなのであり、海外に送金して法人をつくること自体は合法だと言うのなら、ことさら隠す必要はないではないか。

 税務調査の実効性を担保するものと期待されているのが、金融情報の「自動交換制度」。4月のG20声明は、「実施することにコミットしていない全ての国に対し、遅滞なくコミットすることおよび多国間条約に署名することを求める」とし、特に「実質的所有者情報」の「高い優先性を再確認する」とした。実際、震源地のパナマは世論に押されて参加を表明したが、問題は米国だ。双方向の情報交換、特に実質的所有者情報の開示に難色を示し、参加していない。日本がサミット議長国として米国に参加を促すというのなら分かるが、現在の政府の態度は、米国の顔色をうかがっているように見えて仕方ない。

 一方で政府は、銀行口座への付番が決まったマイナンバー制度を推進しているが、迂回手段を駆使した海外での資産形成、特にタックスヘイブン利用の実態把握に対し、この制度が有効との声は聞こえてこない。そもそもこの制度は、全ての取引や所得の把握は「非現実的」との前提で始まっている。利子・配当所得の源泉分離課税見直しにも踏み出せない政府が、公正課税にどこまで本気なのか、疑問を抱かざるを得ない。

(社会新報2016年5月25日号・主張より)


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