HOME広報社会新報・主張・一覧>戦争法施行 新任務先送りの裏で進むことは

広報

社会新報・主張

社会新報

戦争法施行 新任務先送りの裏で進むことは

 戦争法が3月29日、施行された。しかし政府は、PKO(国連平和維持活動)での他国軍隊などへの「駆け付け警護」や治安維持活動といった新任務(武器使用基準は「任務遂行のための武器使用」を認めるものに変わった)の自衛隊への付与や、米軍の兵たんを担うための日米ACSA(物品役務相互提供協定)改定などを先送りした。夏の多国間海上演習リムパックでも、弾道ミサイル警戒監視中の米艦防護など、戦争法に基づき可能となった内容は行なわないのだという。

 だが、本当はどうなのか。日米共同運用調整所が置かれている米軍横田基地などを舞台に合同指揮所演習が実施されていた1月28日、「北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射の兆候をつかんだ」として、政府は非公表でミサイル破壊措置命令を出した。報道によれば、自衛隊制服組トップの河野克俊統合幕僚長は、演習を続行したまま自衛隊員の一部にミサイル防衛(MD)実戦配備に就くよう指示し、これは実にスムーズに行なわれたのだという。当たり前だろう。MDとは日米共同作戦そのものなのだから。

 河野統幕長とは、14年12月の総選挙直後に行なわれた米陸軍参謀総長との会談で安保法制整備について「与党の勝利により来年夏までには終了するものと考えている」と述べたことが昨年9月に発覚し、罷免や証人喚問を求める声が上がるとともに、「軍人政治家」との異名が定着した人物だ。この直前、戦争法案成立を先取りして同年5月に作ったとされる文書の中で統合幕僚監部が「軍軍間の調整所が設置される予定」などと明記していたことも暴露されたが、会談記録や統幕文書について統幕長や中谷防衛相は「同じ題名の文書は存在した」と口をそろえつつ、とぼけ通した。政府が戦争法の施行体制整備に一見慎重に見えるのは、「軍軍」レベルで実戦連携態勢強化が進む現実を見えにくくするためでしかない。戦争法施行に伴い改正された関連政令が公表される中、武器使用に関する訓令が非公表とされたことは、その一端を示す事態だろう。

 自衛隊の新任務だけでなく、TPP(環太平洋経済連携協定)批准も年金積立金運用実績の公表も、参院選後に先延ばしする構えなのだという。安倍政権はそこまでしてでも、参院で改憲派3分の2議席を奪い取りたいのだ。そういう政権下で成立が強行された戦争法が施行されたということの重みを、再認識しよう。

(社会新報2016年4月20日号・主張より)


HOME広報社会新報・主張・一覧>戦争法施行 新任務先送りの裏で進むことは