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注目原発訴訟 無視できなくなった反対派の主張

 福島原発事故から6年目に入った今、原発をめぐる裁判の行方への注目が高まっている。そのきっかけとなったのは、現に稼働中の原発を仮処分決定で初めて停止させた3月9日の大津地裁の高浜原発3、4号機の運転差し止め決定だ。

 だが、司法の姿勢の変化は14年5月の福井地裁の大飯原発差し止め判決を画期として明らかになってきたと言える。先の仮処分決定も、その流れの上に位置付けられるものだ。ポイントは地震想定への疑問だ。

 福井地裁判決は、05年以降の10年弱の間だけでも4原発が5回、想定基準地震動を超える地震に見舞われていることを指摘し、想定手法に根本的な疑問を投げかけた。さらに同地裁は同年4月の高浜3、4号機差し止め仮処分決定(同年12月に取り消し)で、「地震の平均像を基礎として基準地震動を導き出す」手法を明確に批判した。これに慌てた原子力規制委は「基準地震動は平均ではない」と苦しい反論を試みたが、この観点は今回の大津地裁の決定にも引き継がれた。

 実は、新規制基準への疑義は、住民側勝利の判決や決定の中でだけ示されているのではない。大津地裁は15年11月には、大飯、高浜両原発差し止めの仮処分申し立てを却下しているのだが、結論は今回と逆でも、規制基準への不安という点では共通する認識を示していた。また、これも住民側の仮処分申し立てが却下された同年4月の川内原発に関する鹿児島地裁の決定でも、地震想定に関して厳しい見解を示すとともに、同原発をめぐる中心的論点だった「火砕流噴火の予知の困難性」については、住民側の指摘を事実上認めてさえいた。裁判所がこの間、反対派の主張をよく吟味していることがうかがわれる。

 反原発派の主張の妥当性を否定できなくなっていることは、検察審査会の起訴議決を受けた東電元幹部3人の強制起訴の経過にも明らかだ。「津波水位15・7bの試算が握りつぶされたのではないか」という疑いは、国会事故調でも大議論された問題だが、審査会議決は東電の方針変更をはっきりと認定しているのだ。

 関経連の角副会長は3月17日、「一地裁の裁判官」の決定により国策に支障を来すことのないよう「速やかな法改正を望む」と発言した。安保に加えて原発も司法審査の対象外にせよという、まるで「原発統治行為論」、あるいは司法権の上に立つTPPのようでもあり、到底看過できない。

(社会新報2016年4月6日号・主張より)


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