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TPP署名 政府試算の前提は既に存在しない

 4日に12ヵ国が署名したTPP(環太平洋経済連携協定)の内容は、多くの点で過去のEPA(経済連携協定)にはなかった特徴を持つ異例づくめのものだ。

 まず、2章4条で「現行の関税を引き上げ、または新たな関税を採用してはならない」「漸進的に関税を撤廃する」「関税の撤廃時期の繰り上げについて検討するため、協議する」と明記する一方、従来のEPAには含まれていた撤廃・削減の対象にしないとの「除外」規定が存在しない。

 また、政府は農産物の品目別セーフガードがあるから大丈夫だと説明するが、全ての農産物セーフガードは8年目〜最長24年目までに廃止される。他方、WTO(世界貿易機関)が認めている(ウルグアイラウンドで関税化が合意された品目を対象とする)特別セーフガード発動の権利をTPPは認めていない。これも他のEPAに例を見ない。

 全て農業輸出国である米豪とニュージーランド、カナダ、チリの5ヵ国の要請で行なわれる7年後の関税見直し協議も極めて重要だ。第1に、協議対象は「関税、関税割り当ておよびセーフガードの適用に関するもの」であること、第2に、日本が関税撤廃の例外とした443品目(19%)は全て農産物であることを考慮すれば、見直し協議とはすなわち、日本への農産物関税削減もしくは撤廃を迫ること以外ではなく、セーフガード廃止の前倒しも考えられる。しかも、複数国の要請に応えて協議を行なうことを約束した国はほかにはない。

 さらに、2章25条に規定された農産物貿易促進を目的とする「農業貿易に関する小委員会」の設置も、これまでなかったことだ。これが一層の関税撤廃と市場開放を日本に要求する常設の枠組みとして機能することは、想像に難くない。

 政府が昨年12月に公表したTPPの経済効果試算は、全関税即時撤廃を前提とした13年の試算結果と比べると、GDP(国内総生産)押し上げ効果は3・2兆円から13・6兆円に急増する一方、農林水産物の生産減少額は3兆円から1300億〜2100億円へと激減した。だが、先に見たように「市場は一定守られる」という前提は存在しない。

 政府・与党は、日米2国間合意文書がわずかを除き未公表であり、しかもTPP交渉の全やりとりに発効後4年間の守秘義務が課せられていることを承知の上で、協定が示されたのだから全部明らかになったのだという。冗談ではない。

(社会新報2016年2月17日号・主張より)


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