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緊急事態条項 首相はなぜ聞かれたことに答えぬ

 緊急事態条項を憲法に追加する自民党改憲案は、その99条1項で、緊急事態宣言下では「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」とし、その政令の制定・処分については同条2項で「事後に国会の承認を得なければならない」と定めている。

 この条項について社民党の福島みずほ副党首が1月19日の参院予算委で「国会の承認が得られなかった場合、政令の効力はどうなるのか」とただしたのに対し、安倍首相は質問に全く答えなかった。緊急時において「国家、そして国民自らがどのような役割を果たしていくべきかを憲法にどのように位置付けるかについては極めて重く大切な課題」と述べながら、である。しかも、この政令の効力がいつから発生するのか、不承認となった場合はいつから失効するのか、損害の国家補償はあるのか、承認手続きは普通の議案可決手続きと異なるのかなどについて、自民改憲案には何の規定もないにもかかわらずだ。

 13年の自民「Q&A」も、これらの問題について触れることなく、「緊急の財政支出は、承認が得られなくてもすでに支出が行なわれた部分の効果に影響を与えるものではないと考えます」と、とぼけているだけだ。

 99条1項は政令の制定について「法律の定めるところにより」との制約規定を設けているが、これは無意味な要件になるのではないかという疑問の声がある。「特別政令が『法律と同一の効力』を持つということは、『改正草案』の緊急事態条項が多用する『法律の定めるところ』の法律もまた、この特別政令によって改正され得るのではないかという疑念を払拭(ふっしょく)しきれないからである」(水島朝穂早大教授、13年・岩波書店刊『改憲の何が問題なのか』所収論稿より)ということだ。

 また、前提となる緊急事態宣言についても、国会(衆参両院)が解除決議をした場合は「速やかに解除」とされるだけで期限の定めがなく、さらに、衆参の議決が異なった場合の対処規定を欠く。これは、宣言の事前・事後承認と延長について衆院の優越が定められ、しかも参院の議決期限が「5日以内」と明記されていることと際立った対照をなす。端的に言って解除の方がハードルが高いのだ。

 立法権を空洞化させ、首相に権力を集中させる一方、司法権による統制について何も書かれていないことも一大特徴だ。これがナチス授権法でなくて何なのか。

(社会新報2016年2月3日号・主張より)


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