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「慰安婦」合意 「終わった」宣言より具体的誠意を

 昨年12月28日の電撃的な日韓外相会談と「慰安婦」問題合意以降、問題はむしろ再燃の様相を呈してきた。日韓合意で韓国側が「適切な形で解決するよう努力する」としたソウルの日本大使館前の少女像の扱いをめぐり、韓国世論は反発を強めている。しかし、安倍首相は今年1月4日の外交演説で「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることになった」と断言し、韓国政府を突き放した。

 振り返れば昨年11月2日の日韓首脳会談の直前、韓国の朴大統領は「日本政府が、被害者が受け入れ、わが国民が納得できる解決策をできるだけ早く示すことが重要」と述べていた。外相会談直前に示された、これに対する安倍首相の答えが、会談で自ら直接少女像撤去が妥結の最低条件だと迫ったという情報のリークであり、外相会談後も、像の移転が新財団への10億円拠出の前提条件なのだとたたみかけた。合意当事者の岸田外相も首相演説当日、「適切に移設されるものと認識」と公式発言した。これが加害者側がとるべき態度なのか。戦後処理問題を、日韓安保協力の障害除去を望む米国の意向に応えつつ、ナショナリズム志向の民意を調達し政権浮揚につなげることを目的とする外交駆け引きの一種としてしか捉えていないことの証左だ。

 今回の合意で評価されているのが、日本政府の責任を認め、安倍首相が日本国首相としておわびと反省を表明したことだ。これは、日韓の元「慰安婦」支援団体が、この20年間のこう着状況を打開するために、法的責任追及の原則論をいわば棚上げしつつ、「被害者が受け入れられる解決策」の要求へと転換していたことの反映と見ることもできる。そうであるならば、問題はここで終わったのではなく、解決は日本側の今後の具体的対応にかかっているのだ。「アジア女性基金」の中心メンバーだった和田春樹東大名誉教授は、責任を認め謝罪するという意思が明確に伝わらなかったことが同基金事業の反省点との認識から、首相自らが謝罪の言葉を伝え、政府の拠出金は「謝罪のしるし」との趣旨をはっきりさせることが必要だと指摘している(『朝日』12月29日付朝刊)。合意が「名誉と尊厳回復、心の傷の癒しのための事業」をうたっているのなら、歴史教育の問題も重要だ。「終わった」と宣言すれば何かが終わるわけではなく、ましてや「なかったこと」になどなるわけないのは、当然のことではないか。

(社会新報2016年1月13日号・主張より)


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