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軽減税率導入 社会保障や中小業者の犠牲の上に

 自公が12日、「酒類と外食を除く食品全般」への軽減税率の導入で合意し、適用されない「外食」と適用対象となる「持ち帰り・出前」などとの線引きをめぐり、大騒ぎが展開されている。活字媒体の扱いをめぐっては、検閲まがいの議論まで起きている。これは一つの目くらまし戦術ではないのか。自民党は公明党から国民の税金で戦争法を買い、これから票(選挙協力)を買い、そして憲法を買おうとしているのだ。自公への怒りはもっと鮮明に表明されるべきだ。安倍首相は与党合意を「最善の結果」と評したというが、核不拡散体制崩壊の危機促進と引き換えにインドに原発、新幹線、そして武器をトップセールスする首相に実にふさわしい感想ではないか。

 「じゃあ何で増税するのか?」という疑問の声が沸き起こる中、穴が開く財源の約1兆円はどうするというのか。自公は「責任をもって対応」と豪語して先送りした。すでに6月閣議決定の骨太方針で、18年度までの3年間で社会保障費の伸びを年間5000億円に抑える、つまり、年8000億円〜1兆円とされる自然増分を年3000億〜5000億円削る方針が決まっているが、これをさらに上積みするというのか。社会保障費自己負担の「総合合算制度」が、負担上限から給付上限を画するものへと転換するおそれが強い。

 そもそも食品の軽減税率は低所得者対策に有効なのか。欧州の事例に関する実証研究を基にした試算では、消費税の逆進性(消費税の対年収比)のカーブは、軽減税率採用のいかなるケースにおいても同様のカーブを描く、すなわち逆進性は解消されない。また非課税品目でも経費にかかる消費税が価格を押し上げるため、軽減税率適用、イコール価格据え置きでは全くない。

 中小零細事業者は大変だ。いずれにせよインボイス(適格請求書)方式の導入が避けられない中で、滞納と差し押さえの不安に脅えつつ、自己負担で事務の増大に対応せざるを得ない(これにマイナンバー対応が加わる)。そして小規模免税事業者は、世間から「益税」批判を浴びながら、市場の論理の必然として流通経路から排除され淘汰(とうた)されていくだろう。消費税は究極の流通合理化税制だ。

 何かあると「これで日本の政治は終わった」とはよく見聞きする言葉だが、実際に政治が終わるということはない。だからこそ大変なのだ。「アベ政治」は終わらせるしかないのだ。

(社会新報2015年12月23日号・主張より)


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