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緊急事態条項 戦争遂行のために基本的人権制限

 安倍首相の「お友達」として知られる古屋圭司・自民党憲法改正推進本部長代理は9月30日、都内の会合で「本音は9条(改憲)だが、リスクも考えないといけない。緊急性が高く、国民の支持も得やすいのは緊急事態条項だ。本音を言わずにスタートしたい」と、まさに本音を吐露した。古屋氏は「お試し改憲でいけないのか」とも語ったという。しかし、緊急事態条項の導入はただの「お試し」などではない。戦争法、および9条改悪とセットの問題だと捉えるべきだ。

 緊急事態条項を考える際にまず想起すべきは、以前に本欄で触れたこともあるが、1933年3月24日、民主的なワイマール憲法下のドイツでなぜ全権委任法(授権法)制定が可能となったのかという問題だ。同年1月末に首相に就任したヒトラーは即、国会を解散。2月27日に議事堂炎上事件が起きると、ヒンデンブルク大統領は翌28日、「民族と国家を保護するための緊急令」に署名した。基本的人権の制約は「その他の法律で規定された限度を超えても許される」と定め、憲法が保障する基本的人権を停止したこの緊急令の根拠とされたのが、憲法48条の緊急事態条項だったのだ。

 社民、共産両党の集会や出版が禁止され、テロが吹き荒れた中で行なわれた3月初めの総選挙でも、ナチスは過半数を獲得できず、社共両党の合計議席は授権法案可決を阻止できる3分の1に迫っていた。そこでヒトラーはまたもや緊急令を使って共産党の全議席はく奪、両党議員の検挙を行ない、反対は残った社民党議員だけという状況で、法案制定は強行されたのだ。

 12年自民改憲草案は、緊急事態宣言下で「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定できる」としたほか、国会の議決を経ない首相の財政処理・徴税権限や自治体への指示権の行使を定めている。緊急事態での首相の自衛隊や警察への指揮権は現在でも警察法や自衛隊法に関連規定がある。災害対策基本法や有事法制上の権限もある。これで何が足りないのか。自民改憲案がその答えになっている。すなわち、戦争の全般的遂行のために必要な権限だ。

 国会前集会で福島みずほ副党首が指摘したことであるが、ナチスが街頭を武装制圧していた授権法制定強行時のドイツの状況と、今の日本は違う。日本の市民は戦争法案に反対して国会を取り巻く権利と力を持っている。これをつぶそうとするのが緊急事態条項だ。

(社会新報10月21日号・主張より)


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