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戦争法の根拠 不安をあおるか情緒に訴えるだけ

 「日本と日本人を守る」。政権にとって最後に残った戦争法制定根拠は結局これだが、もはやボロボロだ。

 ホルムズ海峡機雷掃海。5月のNHK特番で石油途絶により「寒冷地で凍死者が続出する」と存立危機事態をあおったのは高村自民党副総裁だが、「輸入原油の8割はホルムズ海峡を通っている」としても、13年度の1次エネルギー供給源、電源構成で見る石油の割合はそれぞれ(震災前より若干上がったが)42・9%、13・7%。イランの核開発問題をめぐる緊張緩和もあり説得力は薄らぐ一方だ。

 朝鮮半島有事で日本人避難民を輸送中の米艦防護。昨年5月の安倍首相会見後、そんなことは(当時の97年)日米ガイドラインに書いていないとの批判が噴出したのを意識してか、新ガイドラインでは「協力」が明記されたものの、米軍はそういうことはしないという「常識」は揺らいでいない。中谷防衛相は存立危機事態認定において「邦人が乗っているかは判断の要素の一つではあるが、絶対的なものではない」と答え、実に正直に「総合的判断」の曖昧さと政府への白紙委任という本質をさらけ出した。

 弾道ミサイル警戒監視中の米艦防護。米軍の防護態勢は「自己完結型」と認めたのは首相自身だ。この真の目的は、米軍基地もしくは米本土を守るための日米共同のミサイル防衛(MD)態勢強化にあり、MDはむしろ米国による先制攻撃と連動する可能性が高い。

 「総理大臣としてあり得ないと言っているんだから間違いない」

 首相が、広島の平和記念式典で非核三原則に言及しなかったことと絡め、政府が核兵器は弾薬であり法文上は輸送が(加えて提供も)可能なのだが、政策判断として行なわないとしていることについて国会で聞かれたときの答弁が、これだ。

 冗談ではない。ほかならぬ首相が言っているからこそ全く信用できないのだ。つい最近も、専守防衛の下では「空中給油はしない、空中空輸機は保有しない、訓練もしない」としてきた73年の「田中三原則」が反古(ほご)にされた例がある。自衛隊空中空輸機は08年に初配備され、追って日米共同訓練も始められている。

 結局、問題は昨年7月の集団的自衛権行使容認の解釈改憲に帰ってくる。首相側近が法的安定性は関係ない、立憲主義など聞いたことがないと放言するような政権をこのまま放置することは、あまりに危険すぎる。今こそ起(た)つときだ。

(社会新報9月9日号・主張より)


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