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参特別委論戦 「軍事力」を政策カードとする国へ

 参院平和安全特別委では戦争法案をめぐる論戦が連日続いている。礒崎首相補佐官の「法的安定性は関係ない」発言への追及は序盤戦のハイライトとなったが、形の上では撤回しようが、これが安倍政権の本音であることは7・1閣議決定に基づく法案全体が物語っていることであり、それは個々の答弁にも表れている。

 7月29日の社民党の吉田党首の質問に対する答弁でも、気になる点があった。吉田党首は、安倍首相が「全く間違っている」と躍起になって否定する徴兵制の採用について、かつて「政策判断」と述べたことのある石破地方創生相に対し、兵役は「奴隷的な苦役」に当たると考えているかとただした。石破地方相は、81年の社会党の稲葉誠一衆院議員の質問主意書に対する内閣答弁書に言及して「政府は徴兵制によって一定の役務に強制的に従事させることが憲法18条に規定する奴隷的拘束に当たるとは毛頭考えていない」と述べているとし、徴兵制を政府が違憲(18条違反)とするのは「その意に反する苦役に当たると考えているから」だと答弁した。

 憲法18条には「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」とある。すなわち、政府の立場は「その意に反しない」徴兵制を必ずしも排除していないし、集団的自衛権をめぐる解釈改憲強行を見れば、こうした憲法解釈がもし示されても驚くに当たらない。吉田党首はこの答弁を受け、今でも奨学金返還免除などの経済的インセンティブ(動機)を与えることで自発的主体的に自衛隊員募集に応募するよう仕向ける「経済的徴兵制」が推進される可能性は排除できないと指摘した。

 誤解を恐れず言えば、かつての「総力戦体制」と同様の直接的軍事動員が今日急務とされているとは必ずしも言えない(もちろん日本は戦後、教育界や労働界をも巻き込み、経済大国化という別の意味での総力戦体制構築を目指してきたことには注意が必要だが)。

 しかし、石油ショック後には早くも「総合安全保障」が語られていた。今日、市場や資源へのアクセスと権益の確保などをめぐり、軍事力と軍事的プレゼンスを外交や通商政策のカードとする方向を、日本が明確に選択しつつあることは押さえておくべきだ。その目的達成のための有事強制動員の拡大は今後徐々に、だが確実に追求されるだろう。

(社会新報8月19日号・主張より)


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