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衆院強行採決 いくら言葉遊びしても違憲は違憲

 安倍政権が戦争法案衆院強行採決を急いだのは政権の強さではなく弱さの表れだ。これを示す安倍首相答弁が10日の特別委であった。

 民主党の岡田代表は、日本防衛のため公海上にある米艦への攻撃が日本への武力攻撃の着手と判断されることもあり得るとの政府見解を念頭に、「存立危機事態の場合は個別的自衛権での着手の概念に当たるものは何か」とただした。これに対し首相は、米国への武力攻撃の発生、日本への攻撃の切迫を前提に、「米艦が攻撃される明白な危険という段階で存立事態という認定をすることができる」、つまり、米艦が攻撃される前でも集団的自衛権を行使できると答弁したのだ。

 得意の「総合的判断」でかわせばいいのに、首相はなぜここに踏み込んだのか(しかも質問には答えていない)。朝鮮有事での米艦攻撃には個別的自衛権で対応可能ではないかという民主の議論の立て方、また米艦攻撃が発生し日本への攻撃が発生する「明白な危険があると認められるに至った」事態を「武力攻撃危機事態」とし、この場合は個別的自衛権の拡張として武力行使が可能とする維新案が念頭にあったのだろう。

 だが武力攻撃の着手と武力攻撃の「明白な危険の切迫」(武力攻撃事態法の切迫・おそれ事態)とは異なり、切迫事態では防衛出動はできても武力行使はできない。首相答弁からは、着手概念を手がかりに、切迫事態でも武力行使を可能とする方向に議論を導きたいという意図が感じられる。そこには存立危機事態での武力行使との接点がある。

 問題はそれだけにとどまらない。「外国の武力攻撃」には「他国に対する外国の武力攻撃」も含まれるという横畠内閣法制局長官答弁との関連も懸念される。すなわち、米国への攻撃の着手あるいは切迫を日本の武力行使の根拠として確保しつつ、実態的には対米攻撃着手あるいは切迫を理由とした米国の先制攻撃に加勢していくという恐れだ。

 政府案も維新案も自衛隊法の防衛出動の要件に「新事態」を加えるものであり、実は武力行使の要件は変えていない。これは、「わが国を防衛するため」の解釈が、政府の憲法解釈に基づくものであることを意味している。他国防衛のための武力行使を認める閣議決定には手を触れずに、あれこれ「事態」をいじっても同じ土俵上の話なのだ。違憲立法をつぶすには、まずその前提である憲法解釈を撤回させることが筋なのだ。

(社会新報7月22日号・主張より)


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