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武器使用拡大 自衛隊員のリスクをかえって高める

 自衛隊員のリスク問題との絡みで、安倍首相は後方支援の実施区域について「現在、戦闘行為が行なわれていないだけでなく、部隊等が現実に活動を行なう期間に戦闘行為がないと見込まれる場所」と答弁した。では、なぜ法案にそう書かないのか。消された非戦闘地域の概念(現に戦闘行為が行なわれておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行なわれることがないと認められる地域)と、どこが違うのか。「認められる」では強すぎるとでも言うのか。

 一方、現場が「現に戦闘行為を行なっている現場」となったため上官が活動中断を命じたのに、現場が応じなかった場合の対応に関する吉田党首の質問に対し、中谷防衛相は「自衛隊法の罰則の国外犯に関する検討を行なう」と答え(4月17日、参院決算委)、同法改正案に国外犯処罰規定を盛り込んだ。自衛隊員は海外活動自体の危険性増大に加え、処罰リスクをも負わされることになったのだ。

 リスク問題は武器使用権限拡大とセットになることで深刻さを増している。PKO法改正案は、必ずしも国連総会や安保理決議に基づかず、しかも国連が統括しない活動を「国際連携平和安全活動」とくくり、国連PKOと並ぶ「国際平和協力業務」とした。そして、紛争終了後に当事者が存在しなくなった場合は、領域国の受け入れ同意があれば(それに対する武器使用が違憲の武力行使とみなされる)「国家または国家に準ずる組織」が敵対的なものとして登場することはないという好都合な前提を置いた上で、同業務の一つに「特定の区域の保安のための監視、駐留、巡回、検問および警護」を加え、「その業務を妨害する行為を排除するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合」には武器を使用できると認めている。

 これまでPKO法の武器使用権限は拡張を繰り返してきたが、全て正当防衛・緊急避難という自然権的権利を援用したものとの苦しい説明が行なわれてきた。今回、その枠組みが踏み越えられたことの意味は重大だ。危害射撃要件はこれまでどおりなどとうそぶくのは、米軍とのROE(交戦規則)共有という現実をごまかそうとするものでしかない。

 治安維持任務のための武器使用は武力行使でもなければ正当防衛でもないとしたら、誤って丸腰の民間人を殺傷したりすれば犯罪だ。その責任を負わされるのも現場の隊員ではないか。

(社会新報6月10日号・主張より)

 


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