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戦争法2法案(下)憲法の縛り解けば全ては政府裁量

 「自衛隊員のリスクが高まるといった、木を見て森を見ない議論が多い」。安倍首相はこう言い放った。「兵の命は一銭五厘(赤紙を送るはがき代)」「命は鴻毛(こうもう)より軽し」の言葉がよみがえるとは、悪夢と言うほかない。首相はこうも言う。「自衛隊員のリスク以前に、安保環境が厳しくなり、国民の安全リスクが高まっている」。「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」(教育勅語)までほんのひとまたぎではないか。

 集団的自衛権行使の判断基準について「国民生活に死活的な影響が生じるか否かを総合的に判断する」と首相は答弁した。「一般に海外派兵は許されていない」が、その基準に照らすと、他国領海での機雷掃海は「例外」なのだとする。いったん憲法の制約から自由となり、他国防衛のための武力行使を認めた以上、何とでも言えよう。逆に言えば、「武力行使の新3要件」に合致したとの判断があれば、不可能なことは特にない。実に憲法の縛りを解くとはそういうことなのだ。

 昨年5月の安保法制懇報告は、他国への武力攻撃が「わが国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき」の判断基準の一つとして、「日米同盟の信頼が著しく傷つきその抑止力が大きく損なわれ得る」場合を挙げていた。日米同盟のために「殺し、殺される」。「国民の安全」の名において。首相は日米同盟は「血の同盟」だと言っていた。

 「他国の武力行使と一体化する」後方支援は憲法の禁ずる武力行使とみなされる。政府が今も維持しているとするこの考え方と、従来の後方支援法制で武器・弾薬の提供は行なわないとしてきたこととを、政府は実は、直接結び付けて説明してこなかった。今日への布石であり、今回この2つは完全に切り離された。全ては憲法ではなく政策判断の問題として政府の総合的判断に委ねられる。これこそ戦争法案を貫く哲学だ。

 このことに伴うリスクをまず負わされるのが現場の自衛隊員だ。「業務を妨害する行為を排除するためにやむを得ない理由があると認める相当の理由がある場合」の武器使用や、他国軍の武器防護のための武器使用。政府は、これらは戦闘行為・武力行使ではないと言う。では、事態が交戦状態に発展した場合、誰の責任なのか。「現に戦闘行為が行なわれている現場」から撤退しなかったら。全部政府の裁量的解釈次第だ。無責任にも限度がある。

(社会新報6月3日号・主張より)

戦争法2法案(上)「切れ目なく」戦争に発展していく


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