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官製株式相場 年金積立金は経済の道具ではない

 統一自治体選前半戦投票日直前の10日、日経平均株価がITバブル以来15年ぶりに一時、2万円代を回復した。株価をつり上げた主役の1人が約137兆円の運用資産を持つ年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)であり、これが「官製相場」であることは、公然の秘密となっている。

 そのGPIFは昨年10月末、日銀の追加金融緩和発表と同日、基本ポートフォリオ(金融資産構成)を変更し、国内債券の比率を60%から35%に引き下げると同時に、国内外の株式比率をそれぞれ15%から25%に引き上げた(計50%に)。「株の保有比率の1%引き上げで市場に1兆円流入」と言われる効果を持つこの見直しが、金融緩和を前提に行なわれたことは、GPIF幹部も認めている。

 この前後、年金をめぐる動きが相次いだ。政府の約束である給付水準の所得代替率50%を守れるのは高成長ケース、それも受給開始の65歳時点だけで、後は基礎年金部分を含めて目減りするばかりだという財政検証。運用結果は自己責任の私的年金、個人型確定拠出年金の対象拡大。無年金・低年金者の救済策先送り。据え置き(特例水準)解消と初のマクロ経済スライド発動による実質目減り措置。厚生年金の代行部分まで積み立て不足に陥り、穴埋めできないため代行返上・解散ができずにいた(3階部分の)厚生年金基金が78。これら一連のことが、老後の生活は自助努力・自己責任、貯蓄から投資・運用へ、というメッセージを人々に強力に刷り込んでいる。

 GPIFは運用比率見直し後、株高と円安に支えられて約6・6兆円の収益を出したという。政府は、株式の直接売買、海外インフラ投資などを含む運用対象の多様化や、(迷走中のようだが)金融専門家中心の体制を目指す組織改革の方針を掲げている。だが、上昇一本やりの相場などないにもかかわらず、この組織運営に現状、保険料拠出者(被保険者)の意思を反映する仕組みは存在しない。

 厳しい数字が並ぶ財政検証の中で、GPIFの運用目標(名目運用利回り)は「実質1・7%プラス名目賃金上昇率」という野心的な高さとなった。これに現実性はあるのか。そもそも年金制度の目的とは被保険者の将来の生活の安心にあるはずだ。目先の経済活性化と政治的得点のために奉仕する道具として積立金を使い、人々の老後をいたずらに市場リスクにさらすことなど許されていいのか。

(社会新報4月17日号・主張より)


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