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「わが軍」答弁 最高権力者が憲法の外にいる事態

 安倍首相は3月20日の答弁で自衛隊を「わが軍」と呼んだ。これが波紋を広げると、同30日には「こうした答弁によって大切な予算委の時間が使われるならそういう言葉は使わない」と、まるで問題にする方が悪いともとれる態度をとっただけでなく、「言葉の定義について延々と議論することを果たして国民が望んでいるのか」と述べた。ごうまんさもここに極まれり。

 自衛隊は「戦力」ではなく「自衛のための最小限度の実力」だから合憲だとするのは、60年以上にわたって維持されてきた政府の憲法解釈だ。なぜかくも長く維持されてきたのかといえば、自衛隊合憲を導き出すための政府憲法解釈の根幹だからだ。これを簡単に覆しておいて、単なる言葉の定義の問題をとやかく言うなと開き直るだけでなく、だから憲法を変えればよいのだとあおる。憲法99条の憲法尊重擁護義務を課せられているのに加え、96条の国会の改憲発議権に照らせば、首相には改憲の提案権もないと解されることを考慮すると、首相はもはや憲法番外地の存在というほかない。首相が憲法の外にいる国が、果たして立憲法治主義国家と言えるのか。

 首相が日米共同訓練を語る文脈で「わが軍」答弁を行ない、同27日には「共同訓練の相手国の軍との対比をイメージして」と言い訳したことは、大きな意味を持っている。再改定予定の日米ガイドラインには前回の97年改定時、「共通の実施要領」という呼び方で日米共通の武器使用や兵力運用等に関する具体的規則、すなわち交戦規則(ROE)の策定・共有が盛り込まれたことを想起する必要がある。憲法の交戦権否認との関係で公には存在が否定されていたROEだが、空自が米空軍のROEを準用していることは早くから公然の秘密だった。それが90年代以降、日米共同演習における「訓練上の規則」の存在が否定されなくなった。次のガイドライン改定は、日本有事の共同作戦および周辺有事の米軍後方支援時のROEから、さらに海外での共同作戦ROEへと踏み込むものとなろう。首相がこのことを念頭に「わが軍」答弁を行なったのだとしたら、まさに確信犯だ。

 首相は一方、違憲の武力行使にほかならない集団的自衛権行使について定める法案を「戦争法案」と呼ばれると、「レッテル貼りだ」と色をなした(4月1日、社民党の福島副党首の質問に対して)。首相は何を基準に政治をしているのか。

(社会新報4月8日号・主張より)


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