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川内モデル 不都合なリスク拡大の可能性無視

 鹿児島県の伊藤祐一郎知事は7日、川内原発1、2号機再稼働への同意を表明した。この間、なぜ川内原発をめぐる動きが全国的な注目を浴びたのかと言えば、新規制基準の適用下の再稼働手続きのひな形になると考えられたからだ。この成り行きに関する危惧は、「川内モデル」という言葉と共に現実化しつつある。

 まず伊藤知事。6月、県の地域防災計画が30`県内の社会福祉施設などに対して避難計画を立てるよう定めているにもかかわらず、「要援護者の避難計画は10`で十分。30`までは現実的でなく不可能」と発言し、大きな批判を浴びた知事は、今度は避難先や手段の確保について「そういうマイナーな話はあまり心配する必要がない」と言い放った。

 菅官房長官もすごい。30`県内の自治体に避難計画策定が義務づけられていることと関連して、東電の姉川常務が6日、国会で「地域防災計画が定まっていない、つまり、ご理解をいただいていない場合は、再稼働の条件が十分でないと認識している」と答えたことについて、官房長官は即日、この答弁を否定。地元同意は「川内原発の対応が基本的なことになる」、すなわち地元同意の範囲は県と立地市町村の首長と議会だけだと、たがを締め直した。

 巨大噴火の予測をめぐる原子力規制委の田中委員長の逆ギレぶりも大問題だ。火山専門家からの、事前の噴火予知だけでなく噴火の規模を判断することも困難(すなわち、運転停止や使用済み燃料搬出の判断を行なうことは事実上不可能)との指摘に対し、「必死になって夜も寝ないで観測して頑張ってもらわないと困る」と言ってのけた。これが科学者の発言だろうか。

 これらの発言がはらむ問題性は結局、老朽化が進む原子炉の設計それ自体の妥当性に関する評価を故意に回避し、その周りで若干の制度や機器の整備を行ないさえすれば(あるいはする予定になっていることにすれば)、不都合なリスクを無視できるようになっていると批判されてきた、新規制基準の問題へと帰着する。

 現に福島原発事故の収束作業が汚染水封じ込めや飛散放射能対策、さらに炉内に溶け落ちた燃料の回収という大問題で壁に突き当たっているという事態は、新基準下では他の原発でも起こり得るということだ。というより、福島の実態に合わせて新基準を作ったという疑いさえ抱いてしまう。

 川内モデルを本当に再稼働の範にしてはいけない。

(社会新報2014年11月5日号・主張より)


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