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中東情勢緊迫 自衛隊再派兵の衝動は高まっている

 スンニ派武装組織「イスラム国」打倒を掲げ、米国は8月8日、イラク空爆を始めた。フランスも9月19日、英国は30日に空爆を開始。米軍は22日、シリア空爆にも踏み切り、これには中東5ヵ国が加わった。

 イスラム国の実態には不明な部分が多すぎる。だが、支配地域での市民の殺害、処刑、誘拐などを認定し、1月以降の戦闘による犠牲者は9000人超に上るとする国連イラク支援団調査結果を踏まえれば、とても容認できる存在ではない。

 他方、米国はシリア空爆について、シリアが自国領をイラク攻撃に使われることを防ぐ「能力も意思もない」ために自衛権を行使したイラクに対する集団的自衛権の行使だとするとともに、米国への脅威に対する個別的自衛権の行使だとしているようだが、その論理は明快とは言えない。なぜ国連安保理決議や議会承認手続きを経ないのかという問題に至っては、01年来の対テロ戦争に関する(米政府の考える)全般的授権が有効と考えている節さえある。背景にはイラクの石油権益がちらつくとも言われているが、今回明らかになったのは一言で言えば自衛権解釈の自由自在ぶりだ。

 日本はどうか。安倍首相はシリア空爆後、直ちに「理解」を表明した。国会答弁では「空爆に参加する考えは全くない」と述べている。しかし、アフガン駐留延長も決まり、中東への軍事的関与を長期化させる構えを見せ始めた米国の要求が、財政支援にとどまると考えることはできない。

 「民間軍事会社」の経営者とされる日本人がシリアで拉致された事件は、ある予感を促した。海外での経済権益の危機のみならず、軍事的関与、すなわち海外派兵そのものが、民間軍事ビジネスを呼び込むのだ。

 ここで気になるのは、やはり7・1閣議決定だ。そこには在外邦人救出について、その能力を欠く当該領域国の受け入れ同意があり、領域国の権力が維持されている(つまり敵対する「国家に準ずる組織」が存在しない)場合、(保護前に)武器を使用しても「武力の行使」には当たらないが、前提条件の充足は内閣が判断するとの考えが示されている。また5・15安保法制懇報告には、領域国同意がなくても、その国が意思と能力を持たない場合の自力救出は自衛権行使として許容される場合もあると、今回の米国そっくりの記述さえあるのだ。邦人保護・輸送を名目とした事実上の武力行使はリアルな問題だ。

(社会新報2014年10月15日号・主張より)


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