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朝日たたき 隠して開き直りたいことあるから

 朝日新聞の木村伊量社長は、福島原発事故の「吉田調書」をめぐる記事について「『命令違反で撤退』の表現を取り消すとともに、読者および東電の皆さまに深くおわびいたします」との見解を示した。同時に「慰安婦」に関する吉田清治氏証言に基づく記事について「誤った記事を掲載したこと、そしてその訂正が遅きに失したことについて読者の皆様におわびいたします」とした(9月12日付朝刊)。

 朝日の報道の経過および対応について冷静に検証することはよい。だが、今起きている朝日たたきの様相を見ると、目的はそんなところにはないと言うほかない。「木を見て森を見ない」類いの批判は明確な狙いに沿って行なわれている。

 記事が取り消されたからといって、福島第1近くに退避せよとの吉田所長指示があったにもかかわらず、所員の9割が第2に移った事実は動かない。しかし一部報道は、当時の菅首相の対応への吉田氏の不満表明をことさら強調する。これとは裏腹になおざりになるのは、東電や当時の保安院、安全委の対策の検証であることは見やすい道理だ。

 この間、東電への司法や仲裁機関の責任追及は厳しくなってきた。検察審は東電元幹部を起訴相当あるいは不起訴不当とする議決をしたし、東電が原発ADRの和解案を拒否したことに対して日弁連は、和解案応諾を義務づける立法が必要だとする。再稼働推進勢力は東電や国への矛先を何とかそらしたいのだろう。

 「慰安婦」問題については、「誤報によって多くの人が苦しみ、国際社会で日本の名誉が傷つけられた」との安倍首相の非難が問題を集約的に示している。そもそも多くの人を苦しめ、日本の名誉を傷つけたのは何なのかを見ないことによって守られる「名誉」の何と薄っぺらなことか。ネオナチとのツーショットが国際社会で持つ意味を理解できない与党幹部の語る「日本の信頼」とは何なのか。

 この問題で国連の人権関係諸機関が厳しい対日勧告を重ねる中、次なる標的を96年の国連人権委クマラスワミ報告に据える動きが顕在化してきた。同報告が吉田証言に言及しているのは事実だが、併せて同証言への「異議」にも触れ、その上で「慰安婦」制度を「軍性奴隷制」と定義し、それは今日まで継承されている。外交の行き詰まりをメディア攻撃でごまかすより、国際的議論の経過に内在して反省してみる方が、よほどためになるのではないか。

(社会新報2014年9月24日号・主張より)


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